
PayPayは会社を設立してからわずか3カ月でPayPayアプリをリリースしました。
そのスピード感は一体どんなものだったのか、私たちの予想をはるかに超えるものではないかと思いますが、そんな中でPayPayの顔とも言えるPayPayアプリのデザインを担当してくれたのがプロダクト本部のデザインチームです。今回はPayPay株式会社が設立された当初からPayPayに関わっている青柳さんにインタビューしました。
全くルールのないところからスタートし、一体どうしてスタイルガイドができたのか、またデザインチームが目指すPayPayの未来についてお話していただきました。

青柳 麻紀(あおやぎ まき)
プロダクト本部 デザイン部 部長
プロダクト本部 デザイン部 部長。社内通称は「YAGI」さん。2008年ヤフー株式会社に入社し、Yahoo! JAPANアプリのデザインなどを担当。2014年にはビジュアル設計における黒帯デザイナーとして活躍。2018年のPayPay立ち上げ当初からYahoo! JAPANアプリ内でPayPayが利用できるようデザイン担当として関わり、2019年7月よりPayPayに出向しPayPayアプリのデザイン設計を現場責任者として担当。2020年4月PayPay株式会社に転籍し、2021年5月より現役職。
「とにかくサービスをリリースしよう」ー PayPay設立当時はルールも何もないところからのスタート
青柳さんがPayPayに関わることになったきっかけを教えて下さい。
2018年6月にPayPay株式会社が設立された際は、Yahoo! JAPANアプリにPayPayの支払い機能を組み込むというプロジェクトを担当していました。今から2、3年前は電子マネーがここまで日本全国に普及していませんでしたが、使ってみるとすごく便利で、間違いなくこれから普及すると確信し、自分から手を上げてPayPayへ異動したのがきっかけです。
青柳さんから見て、PayPayで働いている人たちはどのように見えましたか?どのような印象を持っていたのでしょうか。
当時、Yahoo! JAPANアプリのプロジェクトメンバーがPayPayのオフィスを間借りしていて、PayPayで働くメンバーを横目に見ながら作業をしていました。
PayPayはプロダクトを作るスピードや意思決定がとにかく早く、大変そうだなと思ったこともありますが、働いている人たちがとても楽しそうで、生き生きと働いていた印象があります。また働いている人たちもPaytmから出向してきているメンバーや、国籍問わず優秀な人たちが参加していて非常にグローバルな文化。その中でも一番印象的だったのは、当時プロダクト本部長だったAdi(Aditya Mhatre)や他の役員が社員と非常に近い距離間で、一緒にディスカッションをしたり、サービスを作っていたことです。これまで自分が経験したことのない環境で、直接みんなで意見を出し合いながら、少人数にも関わらずものすごいスピードでサービスを開発していたと思います。

青柳さんがPayPayに本格的に関わることになり、戸惑ったり、課題に感じたことはありますか。
「とにかくサービスをリリースしよう、でっかいキャンペーン(100億円あげちゃうキャンペーン)を乗り越えるんだ」という状況だったので、とにかくスピード重視、デザインもサービスもツギハギでルールもない。正直、何からどうしていけばいいかわかりませんでした。でもそんな経験があったからこそ、スタイルガイドができました。
当時、デザイナーは5人。5人いれば5通りのデザインが出来てしまう。デザインのセンスや力量は属人的になってしまうという課題がありました。PayPayのサービスが拡大していくのに合わせて、人も増やしていきたいと考えると、誰が作っても一貫性があり、品質を一定水準以上に保てるように基準やルールを明確にする必要があるのではと感じていました。
これまでの日本企業にはないスタイルガイド
スタイルガイドとは一体なんでしょうか。
PayPayアプリのデザイン哲学や、デザインをする上でのルール、具体的なUIパーツのルールや仕様をまとめたドキュメントになります。PayPayアプリ、PayPayアプリ上に表示されるミニアプリは基本的にこのドキュメントを基にデザインがされています。

海外ではよくある事例だと思いますが、恐らく日本国内でここまで作っている企業は珍しいのではないかと思います。今回、作成するにあたって、さまざまなグローバル企業やプラットフォーマーのデザインガイドラインを調べて参考にしました。
スタイルガイドはデザインチームにとってどんなメリットがあるのでしょうか。
まず、課題としていた属人的なデザインをルール化することで、クオリティーを担保し、一貫性のある体験をユーザーに提供できます。これは社内に限った話ではなく、PayPayは多くのサービスと連携し、ミニアプリもどんどん増えているので、PayPayアプリ内で他社サービスを展開する場合でもスタイルガイドを基にデザインを作成してもらうことが可能になりました。もちろん、各サービス、ブランドに大切にしているアイデンティティがあるので、それも尊重していますが、一貫性が失われると、機能や画面毎にデザインが異なることになり、ユーザーは機能ごとに再学習が必要になります。ユーザーにより良いサービス体験を提供するためにも非常に重要な指針だと考えています。
2つめは、業務効率が改善されました。私がPayPayで働き始めた当初は、デザイナーは私を含めて5名でしたが、現在では14名に増えました。デザイナーが増えたことにより、できることは増えましたが、一方で一貫性が失われたり、細かなデザインの認識合わせや確認などでコミュニケーションコストが増える懸念がありました。しかし、スタイルガイドを活用することで、デザインの基本的な考え方や作成方法を確認する手間がなくなり、新しいUIやサービスデザインを作成する場合でも、どのように作成したら良いかが非常に明確になったと思います。現在のPayPayはWFA制度によりみんなフルリモートで働いているので、そういった環境下でもスタイルガイドを活用してスムーズに業務を行うことができます。

スタイルガイドはとても活用的な一方で、デザインのような視覚的なものを言語化するのは難しいのではと思いました。ここだけの話、作成するのは大変だったのではないでしょうか?
リリースした今でも「これが正解なのかな…」と不安に思うことはあります。色のルール、イラストレーションのルールなどはエモーショナルなもの。みんなでたくさんディスカッションをして作ったスタイルガイドですが、これで完成ではなく、まだまだパワーアップしていきたい。より良いスタイルガイドにアップデートしていきたいと考えています。
ここだけの話、1番大変だったのはリソースの確保です…!作成には私を含め3、4名のメンバーが作成に関わりましたが、みんな通常の開発タスクと並行してスタイルガイドの作成を進めていました。なかなか作成の時間がとれず、リソース管理には苦労しました。ですが、スタイルガイドの作成はプロダクト本部長のAdiが一任してくれて、出来上がったものや構成を報告しながら進めました。現場で裁量権を持って、判断して進められること、各々が信頼関係を築き上げて、自分でどんどん進められるのはPayPayの文化としてすごく良いなと思う部分です。
いつかPayPayオリジナルのデザインを作りたい。PayPayのサービス拡大と共にチャレンジし続けるデザイン
スタイルガイドにこれから期待することはありますか?
前述のメリットに加えて、PayPayアプリをより使いやすく、PayPay全体のブランド力を向上させることです。PayPayの中で提供されているサービスは、たとえPayPayが運営するものでなくても、ユーザーから見たらPayPayが提供しているように見えます。それらのサービスでも、PayPayに関わるすべてのサービスがスタイルガイドを基に作られ、ユーザー体験を統一していくことで、PayPayらしさを醸成できると良いなと思っています。
現在スタイルガイドはPayPayアプリを飛び出して、PayPayと名前がつくすべてのサービス(PayPay銀行やPayPay証券など)にも適用を進めています。1つのスタイルガイドを基にグループ全体で一貫性のある体験を提供できると、ユーザーはシームレスにすべてのサービスを利用でき、ユーザビリティーは向上し、結果的にPayPay全体の体験向上につながるのではないかと思っています。
最後に青柳さんやPayPayのデザインチームが目指していること、目標があれば是非教えて下さい!
私個人としては、今はマネジメント業務が多いですが、PayPayは新しい機能やサービスのリリースがほんとに多いので、デザインという観点からより良いユーザー体験を提供していきたいなと思います。あとはスタイルガイドの目的の一つでもありますが、PayPay全体のブランド力やPayPayらしさをもっと醸成していきたいです。
まだ先の話になるかもしれませんが、いつかPayPay独自のフォントを作りたい!という話もチーム内で出ています。それもPayPayのブランド力を向上させる1つの方法だと思います。PayPayらしさを醸成していくために、やってみたいことやどうしていいかわからないことも多いですが、デザインチームは本当に仲が良く、みんな優秀で、信頼できるメンバーばかりなので、チームみんなでこれからもチャレンジしていきたいと思います!

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編集:Mamiko (PayPay Inside-Out編集部)
※社員の所属等は、取材当時のものです。