決済の先へ ─ 体験を拡張するPayPayカードの構造変革

2026.06.03

リーダーインタビューは、PayPayグループ各社のリーダーの人柄や考え方を紹介するシリーズです。今回は、2026年4月にPayPayカード株式会社 代表取締役社長 執行役員 CEOに就任した宮崎勝宏さんにお話を伺いました。

宮崎勝宏(みやざきかつひろ)

PayPayカード株式会社 代表取締役社長 執行役員 CEO 兼 COO ビジネスグロース統括本部長 兼 クレジットマネジメント統括本部長

1993年国内信販(現Nexus Card)へ入社。2018年ワイジェイカード(現PayPayカード)専務執行役員、2023年副社長に就任。2026年4月より現職。

選ばれ続けるために、変わり続ける

私はいま、自分の役割を「タスキリレーの一走者」だと捉えています。PayPayカードは、これから何十年も成長し続けなければならない。その中で、私が受け取ったバトンを、次の世代に渡していく。その途中にいると考えています。

だから重要なのは、「課題があるかどうか」ではありません。課題が変わり続けているかどうかです。同じ課題を抱え続けている状態こそが、一番相応しくない。

PayPayグループ全体で見ると、成長性と収益性の両立において高い水準にありますが、さらに引き上げていくフェーズにあります。決済を中心に、ユーザー基盤、データ、収益のすべてが連動し、事業としての完成度は年々高まってきています。この成長は、単なる規模拡大ではありません。プロダクトとデータによって、成長と収益を同時に成立させる構造そのものをつくってきた結果です。

その中で、PayPayカードもここ数年で大きく成長してきました。有効カード発行枚数は1,700万枚を超え(2026年4月末時点)、決済基盤としての存在感も高まっています。年間の会員純増数は業界トップクラスとなり、特に若年層を中心に支持が広がっています。しかし、だからこそ、一度立ち止まって考える必要があります。

「このままで、本当にユーザーに支持され続けるのか。」

成長はしている。しかし、それだけでは不十分です。圧倒的に選ばれ続ける存在にならなければいけない。そのために今、私たちは構造そのものを変えようとしています。

決済の先へ、体験を拡張する

クレジットカードの価値は、現金を持たずに決済できる点にありました。しかし、競争が激化し、ポイント還元や年会費無料化が進む中で、ユーザーの求める価値は変化しています。そこで、PayPayグループとして問い直しました。決済とは何か。ユーザーにどんな価値を提供するのか。

決済はゴールではなく、あくまで起点です。その前後にどんな体験をつくれるかが、価値になります。グループとしても、決済・金融・データを横断的に活用しながら、1つの体験としてPayPayグループならではの価値を届ける方向に進んでいます。未来のデジタル金融プラットフォームとして、ユーザーの日常そのものが変わっていくような金融体験をアプリ上で提供する。私たちがやろうとしているのは、決済を中心とした体験そのものを拡張していくことです。

AIを前提に、体験を設計する

その体験を実現するための前提になるのが、AIとデータです。私たちは膨大なデータを保有していますが、ただ持っているだけでは意味がありません。 重要なのは、データによってユーザーを理解し、リアルタイムで価値を届けられるかどうかです。

ユーザーの状態は常に変化します。ライフステージ、収入や支出、あらゆる要素が動き続けています。その変化に応じて、最適な提案を行い続ける必要があります。

人手で対応するには限界があります。分析から実行までを一気通貫で回していく必要があります。その役割を担うのがAIです。人は「何を提供するべきか」を考えることに集中する。AIは、その意思決定を支える実行レイヤーを担う。AIを使うかどうかではありません。AIを前提にユーザー体験を設計できるかどうかに重きをおいています。それは単なる効率化ではなく、プロダクトそのものの価値を変える取り組みです。体験は進化させ続けるものだと考えています。

ユーザーファーストにこだわる

この体験を成立させるために必要なのが「ユーザーファースト」です。私は、「多くのお客様が、お金を払ってでも解決したい課題を解決すること」が仕事だと考えています。無料だから使うサービスではなく、なくてはならないサービスをつくる。そのためには、従来のカード会社の延長では解けない課題を、あえて設定する必要があります。

正直、簡単にできる仕事ではありません。それでも、その無茶振りに向き合い続けることでしか、ユーザーにとって本当に意味のある体験は生まれないと考えています。

成長だけでは足りない。構造を変える

いま、PayPayカードの最大の課題は明確です。それは成長と収益を両立させること。会員数は増えています。決済も伸びています。しかし、収益構造はまだ限定的です。グループとしても、成長だけでなく収益性を同時に引き上げていくことが求められています。

加盟店手数料と金利収入に依存せず、PayPayグループだから実現できるビジネスモデルで持続的に価値を生み出せる収益構造を強化していきたい。その中で見えてきているのが、「ユーザー理解の深化」です。私たちの中には、クレジットマネジメントを担う専門の部門があります。さまざまなデータをもとに、お客様一人ひとりを理解し、その方にとって適切な限度額を判断しています。このプロセスを通じて、お客様の状態や変化を継続的に捉えることができています。

そして、この「理解する力」は、与信のためだけのものではありません。お客様がこれからどのような行動をとるのか。どのようなニーズが生まれるのか。その変化を捉え、先回りして価値を届けることができる可能性があります。たとえば、旅行に行くタイミングや、大きな買い物を検討する瞬間。そうしたライフイベントに合わせて、より適切な情報や選択肢を届けることができる、これはあくまで一例ですが、そうした可能性も見据えています。

ここで重要になるのが、「どこで価値を届けるか」です。私たちには、物理カードだけでなく、PayPayクレジットのようにスマートフォン上で提供しているサービスがあります。その中でも特に重要視しているのが、アプリ上での体験です。その画面は、物理的には非常に限られた面積しかありません。だからこそ、その限られた領域を、不要な情報で埋めてはいけない。データを活用しながら、お客様一人ひとりにとって必要な情報だけを届ける。見やすく、使いやすく、無駄のない体験に最適化していく。それが、私たちが考える適切な提案です。当社の資産を最大限に活かしながら、事業構造を進化させることで、その価値をユーザー体験として還元していく。決済の前後を含めて、ユーザーの意思決定に寄り添う。その体験を設計することが、PayPayカードの新しい価値になります。

データを扱う責任

ただし、これらの取り組みはすべて、適切なガバナンスのもとで成立するものです。データを扱う以上、その責任は非常に重いと考えています。私たちは、データの取り扱いに関するルールを厳しく定め、継続的に見直しを行っています。また、情報が外部に漏れることがないよう、セキュリティ対策についても、継続的に強化していく必要があります。こうした前提があるからこそ、データを活用した価値提供に取り組むことができる。この点は、絶対に揺るがせてはいけない基盤だと考えています。

未完成に、関わる覚悟はあるか

こうした取り組みは、まだ完成されたものではありません。だからこそ、自分たちでつくっていく必要があります。その中で、この課題に自分が関わりたいと思えるかどうか。それがすべてだと思います。

PayPayカードが置かれている環境で求められるのは、与えられたことをこなす人ではありません。今のやり方を前提にするのではなく、「それは本当に正しいのか」と問い続けられる人。アウトプットに、自分なりの価値を付け加えられるか。逆に言えば、指示待ちのスタンスでは、この環境にフィットしません。

私は常々、PayPayカードの進化の先は、単なるカード会社であり続けることではないと思っています。決済を起点に、体験を拡張し、データから新しい価値を生み出す。その変化を、自分たちの手で実現していきます。

読者へのメッセージ

PayPayグループはいま、これだけのユーザー基盤とデータを持つからこそできる形で、決済体験を再定義しています。新しい価値をプロダクトとして実装し、成長と収益を同時に取りにいく。それを実現できる環境は、多くありません。

何かを変えたい。その変化に主体的に関わりたい。そう思うのであれば、ここには挑戦する価値があります。未完成だからこそ関われる。そんな環境を面白いと思える人と、一緒に働きたいです。

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