銀行という体験をどうデザインするのか ー PayPay銀行プロダクトデザイン部が挑む金融UX

2026.08.07

PayPayグループで働くプロフェッショナルに迫るProfessionalsシリーズ。今回は、PayPay銀行プロダクトデザイン部の部長青柳さん、Consumer Experience グループ長の平田さん、Business Experience グループ長の櫻井さんに話を聞きました。3人が語ったのは、画面をデザインすることではなく、人生や事業を支える体験を、金融という枠組みの中でどう実現していくのか。「もっとユーザー視点でものづくりをしたい」という想いから始まった挑戦を伺いました。

青柳麻紀(aka YAGI)(あおやぎまき)

プロダクト統括本部プロダクト本部プロダクトデザイン部 部長

ヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)やPayPayなどでプロダクトデザインやデザイン組織づくりに携わる。2025年6月にPayPay銀行へ異動し、プロダクトデザイン部の立ち上げを担う。現在はプロダクトデザイン部の部長として、ユーザーファーストな銀行体験の実現とデザイン組織作りを推進している。

平田修一(ひらたしゅういち)

プロダクト統括本部プロダクト本部プロダクトデザイン部 Consumer Experienceグループ グループ長

金融領域で新規プロジェクトの立ち上げからアプリのプロダクトデザイン、UX設計を経験。2017年よりPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)のプロダクトに関わり、現在はPayPay銀行 Consumer Experience グループ長として、生活者視点から銀行UXの向上に取り組む。

櫻井朋大(さくらいともひろ)

プロダクト統括本部プロダクト本部プロダクトデザイン部 Business Experienceグループ グループ長

ヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)でアプリ・Web領域のプロダクトデザインやUX設計、プロダクト改善を経験。現在はPayPay銀行Business Experienceグループ長として、法人・事業者向けの銀行UX向上に取り組む。

もっとユーザー視点でものづくりを

YAGI:
2025年6月にプロダクトデザイン部を立ち上げたとき、一番に考えていたのは、これからのPayPay銀行のことでした。これから先、もっとユーザー視点でものづくりを進めていく必要がある。そう考えたとき、デザイナーの役割も、これまでとは少し変わっていく必要があると思ったんです。

平田:
その話を聞いて、「デザイナーの役割が今まさに変わろうとしているんだな」と感じました。以前は、デザインというと画面をつくることを考える場面が多かったと思います。ですが、これからは「ユーザーにとって本当に良い体験とは何か」を考えるところから始める。その考え方を聞いて、これからのプロダクトづくりが楽しみになりました。

櫻井:
私も同じです。どんな画面をつくるかではなく、お客さまにとって本当に価値のある体験とは何かを考えるところから始める。それは、今も常に意識していることですね。

YAGI:
もちろん、最初からそうした体制が整っていたわけではありません。でも、「もっとユーザー視点でものづくりをしたい」という想いを、日々の議論を通じて少しずつ積み重ねてきました。その積み重ねが、今に繋がっているんだと思っています。

ものづくりの進め方を変える

YAGI:
もっとユーザー視点でものづくりを進めたいという思いだけでは、ものづくりは変わりません。だから、デザイナーだけではなく、プロダクトマネージャーやエンジニアも含めて、ユーザー視点で議論できるプロセスを整えていく必要がありました。そこで、この一年は組織づくりにも力を入れてきました。プロダクトデザイン部を発足し、デザイナーの役割を明確にしたうえで、プロジェクトの初期段階からデザイナーが関われる体制を整えてきたんです。また、毎週UX Reviewを実施し、シニアプロダクトマネージャーとデザイナーが必ずユーザー視点でレビューする場も設けています。ビジネス要件をそのまま形にするのではなく、「本当にユーザーにとって価値のある体験になっているか」という視点から、プロジェクトの背景や目的、ユーザーニーズまで含めて議論するようになりました。その結果、リリースを見送ったプロジェクトや、ソリューションを大きく見直したプロジェクトもあります。それも、ユーザー視点でものづくりを進めるために必要なプロセスだったと思っています。

平田:
Consumer Experience グループの責任者として動き始めてから、一番変わったのは、「ユーザーにとって何が一番良い体験なのか」から議論するようになったことです。レビューやプロダクトマネージャー、エンジニアとのコミュニケーションも、その前提で進められるようになり、「みんなで一緒にプロダクトを考える」という空気が少しずつ育ってきました。

櫻井:
法人・個人事業主のお客さま向けの領域でも、同じような変化を感じています。以前より、プロダクトマネージャーやエンジニアと早い段階から議論することが増えました。「どうつくるか」ではなく、「お客さまにとって本当に価値があるものは何か」を起点に話す時間が増えたことが、一番大きな変化だと思っています。

YAGI:
もちろん、まだ理想の形になったとは思っていません。でも、「もっとユーザー視点でものづくりをしたい」という意思は、少しずつ日々の仕事に表れ始めています。だから次は、この新しいプロセスで成果を出し続けること。それが、これからの挑戦だと思っています。

人生のタッチポイントから考える

YAGI:
PayPayグループでは「ユーザーファースト」という言葉をよく使います。でも、私たちPayPay銀行のデザイナーが考えるユーザーファーストは、ユーザーの要望をそのまま実現することではありません。大切なのは、ユーザーの人生を俯瞰して見ることです。人生のどんな場面で銀行を使い、どんな不安や課題を抱え、何を実現したいと思っているのか。その本質を理解した上で、自分たちなりに解釈し、最適な体験として届ける。それが、私たちが考えるユーザーファーストです。

平田:
私も、その考え方が出発点だと思っています。ただ、銀行だからこそ難しいことがあります。銀行では、お金や大切な手続きを扱います。だから、少しでも「これで合っているのかな」「失敗したらどうしよう」と感じさせてしまうと、サービスそのものへの信頼が揺らいでしまいます。例えば、振り込みが完了したあとも、「完了しました」と表示するだけではなく、振込明細へすぐ確認できる導線を追加したことがありました。振り込めたことをもう一度確認して安心したいというユーザーが一定数いることが分かり、その安心まで含めて体験として設計しました。画面を分かりやすくすることだけではなく、「安心して使える」という体験そのものを設計する。そこが、銀行のデザインの一番難しいところであり、一番面白いところでもあると思っています。

櫻井:
法人・個人事業主向けの領域でも、考え方は同じです。私たちが支えたいのは、銀行を使うことではありません。その先にある、お客さまの事業です。例えば、PayPay for Businessとの連携やオンラインでの資料提出も、その1つです。銀行として必要な確認やルールの遵守を両立しながら、どうすれば迷わず手続きを進められるか、待ち時間を減らせるかを考える。そうした工夫は、事業者のみなさんが本来の業務に集中できる環境をつくり、「事業の流れを止めない」ことにつながると思っています。だから私たちは、「使いやすい銀行」ではなく、「事業を支える銀行」でありたいと思っています。

YAGI:
銀行には、法令やルールなど、大切にすべき要件が多くあります。例えば、「預金革命」の体験を見直した際も、法令上必要な情報をどう伝えながら、ユーザーが直感的に理解できる体験へ落とし込むかを何度も議論しました。ゲームUIなど金融以外のサービスも参考にしながら、「ユーザーにとって分かりやすい金融体験とは何か」を考え続けました。金融という前提があるからこそ、守るべき信頼性を担保しつつ、幅広い視点で体験を考えられる。そこに、デザインの面白さがあると思っています。そして私たちが目指しているのは、銀行を使っているという感覚ではなく、生活そのものが豊かになっている状態です。銀行を意識しなくても、自然と人生を支えている。そんな金融体験をつくっていきたいですね。

未完成な組織だからこそ、面白い

YAGI:
この一年を振り返ると、プロダクトデザイン部を立ち上げ、ユーザー視点でものづくりを進めるプロセスを少しずつ整えてきました。もちろん、それだけで理想の状態になったとは思っていません。むしろ、「もっと良くできる」と思えることが、今はたくさんあります。私が変えたかったのは、誰かの考え方ではありません。ユーザー視点でものづくりを進めやすい体制やプロセスをつくることでした。その積み重ねが少しずつ形になり始めている今だからこそ、このフェーズが一番面白いと感じています。

平田:
私は長くPayPay銀行で仕事をしてきました。だからこそ、この一年で「ようやく変えられるようになってきた」という実感があります。以前から「もっとこうできるのに」と思っていたことを、今はチームのみんなと議論しながら少しずつ形にできるようになりました。まだまだやりたいことはたくさんあります。それをチームのみんなと一緒に考え、一緒に形にしていきたい。今は、そんな想いですね。

櫻井:
以前より、プロダクトマネージャーやエンジニアと自然に話しながら、一緒にプロダクトを考えられるようになりました。まだ理想の形ではありません。でも、「もっとこうしたい」と思ったことを、一人ではなくチームで育てていける。その環境が少しずつできてきたことを、とても前向きに感じています。

YAGI:
まだ完成した組織ではありません。でも、それを焦りとは思っていないんです。今は、本当に「ようやくここから始まる」という感覚があります。

これから目指す未来

YAGI:
私たちが目指しているのは、銀行をもっと生活に溶け込む存在にすることです。銀行を使っていることを意識しなくても、気づけば生活を支え、お金が自然に貯まり、その先の資産形成までつながっている。そんな体験が当たり前になれば、銀行というサービスの役割も、もっと変わっていくと思っています。PayPayグループには、決済、投資、保険など、生活を支えるサービスがあります。それらをシームレスにつなぎ、ユーザーの生活全体を支えていく。さらにAIの力も取り入れながら、一人ひとりにとって自然で心地よい体験を実現していきたいと思っています。そのためにデザインの力でできることも、まだまだあると感じています。

平田:
私自身は、「迷わない銀行」をつくっていきたいと思っています。銀行を使うたびに、「これで合っているかな」と不安になるのではなく、自然に使えて、安心して任せられる。そんな体験を積み重ねていきたいです。

櫻井:
私が目指したいのは、銀行を利用することが目的ではなく、お客さまの事業が前へ進む金融体験です。銀行として必要な手続きや確認はあります。それでも、お客さまが迷わず進められ、事業の流れを止めない体験をつくることが、私たちの役割だと思っています。その積み重ねによって、銀行という存在そのものが、もっと自然に事業を支える存在になっていけたらと思います。

YAGI:
銀行を使っていることを意識しなくても、PayPay銀行を使っていることで、いつの間にか生活そのものが豊かになっている。そんな未来を、仲間たちと実現していきたいと思っています。

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