India Dev Speaks vol.19 – 7,500万人の日常を創るエンジニアリング ー PayPay Indiaで得られる大規模開発×グローバル・コラボレーションの真髄

2026.09.14

PayPay IndiaのWebフロントエンドチームは、インターフェースを構築するだけでなく、日本の7,500万人(2026年8月時点)を超えるユーザーに向けた体験を開発しています。この規模でシステムを稼働させるには、クリーンなコードを書くだけでは不十分です。妥協のないUser Firstのマインドセット、国境を越えたシームレスなコラボレーション、そして最先端のAIツールを取り入れるアジリティが求められます。本号では、WebチームのキーメンバーであるKushagra Agrawal(Tech Lead)、Dimple Balchandani(Senior Frontend Engineer)、Nimish Malhotra(Frontend Engineer)の3名に話を伺いました。日々の課題、プレッシャーの大きいデバッグへのアプローチ、そしてPayPay Indiaにおける真の「成長」の裏側に迫ります。

フラットな議論が生み出す妥協なき開発環境

まずは、自己紹介とPayPay Indiaでの現在の役割について教えてください。

Kushagra:
WebフロントエンドチームでTech Leadを務めています。業務の大部分はハンズオンでの機能開発ですが、最も注力しているのはアライメント(方向性のすり合わせ)です。チームが開発するものが会社の期待する高い基準を満たしているかを確認し、技術的な実行と組織全体の目標との間にあるギャップを埋める役割を担っています。

Dimple:
こんにちは。Senior Frontend EngineerのDimpleです。2023年にPayPayに入社し、その後インドの開発拠点へ異動しました。デザイナー、プロダクトマネージャー、TPM、他の開発者など、ステークホルダーとの技術的な議論に深く関わっています。ミッションは、チーム内でコード品質に対する強力なカルチャーを維持しながら、主要な機能リリースの技術的なフロントエンドを統制することです。

Nimish:
私はFrontend Engineerとして、主にユーザー向け(コンシューマー向け)アプリ側とBFF(Backend For Frontend)レイヤーを担当しています。コンシューマー向けアプリの領域において、チーム内での機能提供をエンドツーエンドで責任を持って進めています。

PayPay IndiaのWebチームで働いていて、現在のチームの雰囲気やワークスタイルをどのように感じていますか?

Dimple:
すごく働きやすいカルチャーです。ジュニアやシニアといった立場に関係なく、誰もが自分の意見を言うことができる環境ですね。どうすればより良くできるかを積極的に議論し、特定の技術的な方向性が最適ではないと思えば、恐れずに自らの意見をぶつけます。「圧倒的な品質を提供する」という同じ目標に向かって、全員が手を取り合って進んでいる感覚ですね。

Kushagra:
付け加えると、私たちのチームならではの面白さは、扱う仕事の幅広さにあります。エンジニアリングチームの多くは、PayPay Gift Vouchersなど単一のプロダクトラインに専念するように構成されていますが、Webフロントエンドチームは多岐にわたるドメインに触れます。数週間、あるいは数ヶ月ごとに全く新しいことに取り組む機会があるんです。絶え間ないコンテキストの切り替えが、常に新鮮で高いモチベーションへと繋がっています。

スローガンで終わらせない。日々の開発で体現する真のUser First

User FirstはPayPayのコアバリューです。これは日々のエンジニアリングにおける意思決定や、他チームとのコラボレーションにどのように反映されていますか?

Kushagra:
誰もがあるべきプロダクトの形を実現したいと願っていますが、複数のチームの足並みを揃えるのは難しい場合もあります。Tech Leadとしての私のアライメントの秘訣は、「質問する」ことです。プロダクトの要件に対して疑問を持ち、何がユーザーにとってベストかを基準に常に方向修正していくことこそが、重要な役割です。特定の方向性を指し示すだけではなく、確認の質問を投げかけることで、PdMやデザイナーが自身の前提を考え直すきっかけを作ります。多くの場合、彼ら自身で点と点を繋ぎ合わせて答えを見つけてくれます。

Dimple:
関連して思い出すのは、案内用のモーダルを追加するよう依頼された時のことです。ユーザーがサービスに申し込むためにページを訪れると、ポップアップによって操作が中断されてしまう仕様になっていることに気がつきました。エンジニアリングとUXの観点から、申し込みのフローを妨げる不必要な1クリックだと感じました。ただ言われた通りに開発するのではなく、モーダルをA/Bテストの対象にすることをプロダクトチームやデザインチームに提案しました。これにより、実際のデータを収集し、思い込みでユーザー体験を低下させていないかを確認することができました。

Nimish:
そうですね。私たちは要件に対して異議を唱えることもあります。新機能の開発時には、エンジニア、デザイナー、PdMが集まります。ユーザージャーニーに曖昧な点があったり、もっとスムーズにできると感じたら、私たちは声を上げます。主張が技術的に妥当であり、ユーザーを第一に考えているものであれば、PdMは非常に受容的で、最終的なプロダクトに影響を与えることもよくあります。

Kushagra:
いつも私は「PayPay 5 senses」のひとつである「Work for LIFE or Work for Rice」を体現できるように業務と向き合っています。タスクを完了させるためだけにコードを書いているのではなく、最終的なプロダクトと、ユーザーの生活に深くコミットすることこそが本質なんです。

7,500万人のインフラを守る「午前2時のルール」とBlamelessな文化

7,500万人という規模での運用には、深刻な技術的課題も伴うと思います。これほどの高トラフィックにおいて、システムの信頼性やデバッグにどう対応していますか?

Kushagra:
大規模開発において、モニタリングは後回しにはできません。最初に考慮すべきことです。「ユーザーが問題に気づく前に、どうやって特定し修正するか?」を常に問いかける必要があります。PayPayには、重大な問題を見逃すくらいなら、声を上げて結果的に誤報だった方が常にマシであるという考え方もあります。また、私はアーキテクチャやPRレビューの際に午前2時のルールと呼んでいるものを徹底しています。チームに対して「もし半年後の午前2時にクリティカルなアラートで叩き起こされたとして、今のログとアラートの仕組みで、即座に修正に必要なコンテキストを正確に把握できるか?」と問いかけます。私たちは、そのようなエッジケースを想定してシステムを設計しています。

Dimple:
本番環境で実際にクリティカルなアラートが鳴った際には、厳密なPagerDutyのローテーションで対応します。オンコールエンジニアの最初の任務はトリアージです。ログやモニタリングダッシュボードを深く調べ、それが私たちのドメインの問題かどうかを確認します。問題であれば修正し、他ドメインの問題であれば、すぐに関連チームや担当者(PIC)をタグ付けして優先度を確保します。非常に統制の取れたスピード感のある現場と言えますね。

Nimish:
本番環境の問題に対処することは、非常に密度の濃い学習体験です。私が得た最大の収穫は、非難しない(Blameless)チーム重視のカルチャーが持つ力です。厳密なテストを行っていても、例外は発生します。エラー発生時に階層はありません。シニアもジュニアも一丸となって問題に取り組み、エラーログを追跡し、可能な限り早くホットフィックスをリリースします。修正が終われば、二度と同じことが起きないようにより堅牢なテストケースを書くだけです。

AI活用でフルスタック化を加速。圧倒的なコード品質

AIツールはソフトウェアエンジニアリングを急速に変えつつあります。コードの品質と生産性を維持するために、日常的にAIをどのように活用していますか?

Nimish:
AIは静かに、しかし劇的に私たちの開発プロセスを進化させました。会社側からは開発ワークフローをサポートする強力なツールが提供されています。PayPayのコーディング標準に特化した独自のAIアシストツールも作成しました。AIはボイラープレートの生成や、エッジケースを網羅したテストスイートの作成を支援し、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体を加速させてくれます。PRレビューにはAIコーディングエージェントを使用しています。人間がコードを見る前に、まずはAIによるレビューを必須とし、低レベルの問題を事前に検知しています。

Dimple:
最大の変化は、AIが私たちをより効率的なフルスタック開発者にしてくれたことです。主な専門領域はフロントエンドですが、最近ではバックエンドやBFFのプロジェクトも多く担当するようになりました。以前なら、バックエンドのインシデントのデバッグにはかなりの時間とリソースが必要でした。今ではAIの支援により、不慣れなコードベースであっても根本原因をすばやく特定し、はるかに速く解決策を提示できるようになりました。また、Figma、Jira、ConfluenceなどのMCPプラグインも活用し、ワークフロー全体の最適化を図っています。

Kushagra:
コードレビューの観点から見ると、AIは早い段階での問題のハイライトや、低レベルの構文チェックをスキップするのに非常に優れています。これにより、人間のレビュアーは純粋に深い論理やアーキテクチャのフローに集中できます。しかし、私たちには厳格な哲学があります。それは「人間の判断こそが王である」ということです。AIはガードレールとして機能しますが、ゲートキーパーは常に人間でなければなりません。AIが生成したコードを盲目的に信用することはできません。本番環境にデプロイされる前に、すべての行が開発者によって徹底的に読まれ、検証される必要があります。

日本の日常を創る確かな使命感と圧倒的な成長環境。未来の仲間に求めるもの

PayPay Indiaでの時間を振り返って、ご自身の成長をどう感じていますか?また、このチームで本当に活躍できるのはどのようなエンジニアだと思いますか?

Nimish:
成長はある特定の瞬間ではなく、日本のユーザーに向けて開発を行う日々の中での結果起こるプロセスです。複雑な問題にアプローチする際の思考プロセスがどう進化しているかに気づいた時、自分の成長を実感します。日本中の至る所で、例えば、京都のローカルエリアにある小さな加盟店でPayPayが使われているのを実際に見た時は、私たちのコードが何千万人もの人々の日常生活を楽にしているのだと実感し、信じられないほど感動しました。確固たるコンピューターサイエンスとJavaScriptの基礎を持ち、Webが機能するコアな仕組みを理解している人なら、間違いなくここで活躍できるでしょう。

Kushagra:
成長については完全に同感です。私たちは非常に多くの異なるプロダクトラインに携わっているため、毎日新しくてユニークな技術的課題に直面します。これから入社したいと考えている人に求めるのは、卓越した問題解決能力です。本質的に問題を解決できるなら、技術スタックは重要ではありません。次に、強力なアライメント能力とコミュニケーションスキルが必要です。Frontend Engineerは結節点であり、バックエンド、BFF、デザイン、プロダクトの各チームと対話します。7,500万人もの人々が自分が作ったUIとインタラクトする、その醍醐味を味わいたいなら、ここは最高の場所です。

Dimple:
最も成長できた時期は、PayPayの加盟店向けアプリケーションの管理を任された時です。複数のプロジェクトを同時に処理し、厳しい期限を守り、コンテキストを切り替えるのはハードでしたが、そのおかげでこのドメインにおける深く確固たる専門知識を築くことができました。未来のチームメイトに伝えたいのは、重要な金融アプリケーションの直接的なインターフェースを構築している以上、セキュリティとパフォーマンスに対する鋭い意識を持たなければならないということです。そして最後に、協力的な環境を重んじること。異文化間のコラボレーションを楽しみ、健全な技術的議論を恐れず、考え得る最高のプロダクトを作りたいと思っている方なら、ぜひ一緒に働きたいですね。

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