機械学習モデル×ユーザーファーストで、想定の5倍の成果を生んだ「PayPay資金調達」

2024.06.19

PayPayグループのビッグプロジェクトの舞台裏に迫るProject Storyシリーズ。
本シリーズでは、重要プロジェクトにスポットライトを当て、その裏にあった障壁や各担当者のこだわりなど現場でのリアルなストーリーを、担当者へのインタビューを通じてお届けします。

2024年3月26日にリリースした加盟店向けの新サービス「PayPay資金調達」は、PayPay初の機械学習モデルを活用したプロダクト。想定の5倍のペースでお申し込みをいただくなど、好評を得ています。今回は、このサービスのリリースを推進したメンバー8名にお話いただきました!


渡邊 塁(わたなべ るい)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信 マネージャー

銀行で法人審査・渉外を担当した後、大手・ベンチャーで金融サービスの事業開発に従事。2021年1月PayPayに入社。現在は加盟店向け金融事業の戦略立案・事業開発を担当。


西山 真巧(にしやま まさよし)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

生命保険業界で法人領域の事務、新規事業開発、経営企画等を経験。保険以外の様々な金融サービスをユーザーに届けたいという想いから、2023年1月にPayPayに入社。


関根 諒介(せきね りょうすけ)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

クレジットカード会社・銀行、SaaS系スタートアップでの勤務を経て、2023年7月PayPayに入社。現在は加盟店向け金融事業の戦略策定・事業管理、営業・マーケティングを担当。


継枝 研太(つぐえだ けんた)

金融事業統括本部 金融戦略本部 新規事業開発部 戦略企画

フィンテックスタートアップ、IT業界でキャリアを積み、2023年5月にPayPayに入社。現在は、加盟店向け金融事業の立ち上げなど、PayPayの新規事業・新サービスの企画を担当。


南 賢太郎(みなみ けんたろう)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

統計学で博士号を取得。AIスタートアップで機械学習の基礎研究や金融AI分野の研究開発に携わった後、2023年12月PayPayに入社。現在は与信モデル開発などに携わる。


中尾 彰博(なかお あきひろ)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

銀行で法人融資の営業・審査・リスク管理を経験した後、監査法人やフィンテックスタートアップでデータ×与信の領域のビジネスに従事。2023年8月PayPayに入社。


銭 丹翌(せん たんよく)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

ITベンダーで地銀向けのAMLおよび融資システム開発に携わった後、IT専門商社でAIコンサルティングを経験し、2023年9月PayPayに入社。


大場 孝二(おおば こうじ)

金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 データ与信

証券会社で金融マーケットに携わった後、数社で機械学習プロジェクトに従事。2023年11月PayPayに入社。

データサイエンティストとビジネスメンバーの混合チームで、新規事業のリリースを牽引

2024年3月26日から加盟店向けの新サービス「PayPay資金調達」がスタートしました。サービスの概要について簡単にご説明いただけますか?

渡邊:
PayPay資金調達は、PayPayの加盟店が資金を必要とした際に、将来見込まれる売上を事前に受け取れるサービスです。精算は将来の売上金の中から行い、担保や保証も必要ありません。また、審査のための書類作成・提出などの手間がなく、申し込みから数分程度で入金されるという手軽さで好評をいただいています。

渡邊 塁

皆さんの業務内容やプロジェクトでの役割について教えてください

渡邊:
このプロジェクトをリードしたデータ与信チームは、主にサービス要件を検討するビジネスメンバーと機械学習モデルを駆使するデータサイエンティストメンバーで構成されています。私はチームマネージャー兼プロジェクトマネージャーとして、スケジュールやマイルストーンの管理、報告・決裁対応、チームの課題解決などを行っています。

西山:
私はビジネスメンバーとして、PayPay資金調達の法的要件の検討、途上管理/債権管理の体制の構築および高度化などを主に担当しています。今回のPayPay資金調達は将来債権譲渡(いわゆるファクタリング)のスキームであることを遵守したうえで、加盟店にとって利便性の高いサービス設計にできるかがポイントでした。プロジェクト開始時は課題が山積していましたが、法務部/コンプライアンス部をはじめとした関係部署の協力の下、なんとか無事リリースにたどり着くことができました。

関根:
私は、PayPay資金調達の利用拡大を目的としたGo To Marketの戦略立案・推進や、事業の売上・利益計画の策定、計数管理などを主に行っています。

継枝:
私は新規事業や新サービスの企画を担当している戦略企画チームから、このプロジェクトに参画しています。主にビジネス要件の策定、UI/UXの検討などに携わりました。

中尾:
チーム内のエンジニアメンバーでは私が最初に入社したのですが、その時点では予測モデルの検討はあまり進んでいませんでした。何を予測対象とするのか、どのようなデータが利用可能なのか、社内制度上どのような扱いになるのかといったところから手探りで進めていきました。

銭:
私が入社した時には、予測モデルは基本設計段階を終えており、実用化に向けた精度向上が主な課題となっていました。そこで、モデルの予測性能を高めることに加え、モデル運用に向けたデータ連携やインフラ面の仕様検討にも取り組みました。

大場:
私は主に予測モデルの性能検証を担当しました。加えて、モデル運用後のモニタリング内容の検討なども行いました。

南:
私はリリース直前の大詰めの時期に入社したため、「これがなければリリースできない」という必須の機能を、ビジネスチームとの間に立って完成させることに注力しました。今後も妥協せずに顧客体験を改善し続けるため、機械学習やデータサイエンスの観点から貢献していきたいと思っています。

ユーザーファーストを貫くことで、想定の約5倍の申し込みを実現

プロジェクトを振り返って、いかがですか?

渡邉:
2023年6月1日に100名近くを集めてキックオフをしましたが、その時点ではまだデータ与信チームは創設しておらず、専任は一人もいませんでした。今日集まった機械学習エンジニアたちもまだ入社していません。一方でタイムラインはしっかり決まっていたので、不安続きでしたね。

南:
従来の資金調達のプロセスでは人手を使って審査しているところを、機械学習モデルを使うことで数秒で完了させ、即座に入金プロセスに移れるというのが今回のサービスの肝です。そこで重要になるのが予測モデルの精度であり、PayPayが蓄積しているデータが大いに活かされました。

大場:
盤石な顧客基盤によるデータの豊富さに加え、加盟店側だけでなくユーザー側のデータも持っているというのがPayPayの強みですね。それによって、月間のGMVなどの算出だけでなく、常連客が多い店、若い人に人気の店といった情報も活用できます。こうした2-wayの情報を持つことが予測モデルにもいかされています。

特に大変だったのはどんなことですか?

関根:
私はサービスのコンセプトや事業計画を作成する役割だったのですが、私自身、当時はこのサービスによって誰がどう幸せになるのかを、具体的にイメージできていなかったんです。ともすれば単なる数字遊び…ただの絵に描いた餅になってしまうこともあるので、モヤモヤしたものを抱えていました。そんな中、11月頃に加盟店に直接お伺いしてさまざまな経営のお悩みを聞く機会を得ることができました。既存の資金調達に対する課題感についても理解できたことで、解決したい課題やターゲットとなるペルソナがクリアになり、プロダクトの強みとして磨き込む部分や、その打ち出し方についての議論の質が上がりました。「誰のためのサービスか?」についても、チーム全体の共通認識が進んだことで、プロジェクトの成功につながる大きな分岐点になったと感じています。

渡邉:
初めから、なんとも説明の難しいサービスだと感じながら進めていたんですが、社長の中山さんから「本当に加盟店のオーナーの気持ちに寄り添って考えきれているのか?直接話を聞いて確認できているか?」と言われたことをきっかけに、スケジュールがタイトな中、3週間弱で30件超のヒアリングを強行したんです。その甲斐あって、最後まで加盟店目線でプロダクトを作り上げることにこだわることができました。

継枝:
「商店街のラーメン屋の親父さんが昼休憩中に資金調達できる」というコンセプトでUI/UXをギリギリまで磨きましたね。サービス名も100案近く考えて、社内投票も実施したものの、最終的にはユーザーインタビューを受けて決定したことも印象的でした。

南:
PayPayにとっては社外に提供される初めての機械学習プロダクトですので、エンジニアとしては産みの苦しみも多く、開発プロセス面での気づきも多くありました。通常、機械学習モデルの開発はウォーターフォール型ではなく、データサイエンティストが実験しながら試行錯誤して作り上げていきます。実験プログラムは大抵「使い捨て」になるため、顧客に提供するプロダクションコードとは品質ギャップが生じるんです。そこで研究開発と製品コードのデプロイを滑らかにつなぐよう試みるわけですが、初めての機械学習プロダクトで完璧に実践できるわけでもなく、混乱が生じる場面もありました。

銭:
私もこれまでのキャリアでは、データを分析し、モデルを作って終わることがほとんどでした。しかし、今回のプロジェクトはモデルを作って終わりではなく、実際のサービス稼働に向けた実装が必要だったため、金融戦略部以外のエンジニアメンバーとの連携も求められました。例えば、安定的かつ効率よく予測モデルを回せるよう、インフラ関連のチームと密にコミュニケーションを取るなどしながら、実装を進めました。

西山:
しかも今回は新規事業ということもあり、バックオフィス業務も大量に発生するため、プロダクト本部だけでなく、社内システムの開発を担うシステム本部とも連携が必要でした。3つの部署で開発を進めるというのはなかなか難しく、金融事業部側で課題を整理したり、方針を示したりしながら、何とか年度内リリースに間に合わせることができました。

リリース後の反響と、今後の展望について教えてください

渡邉:
事業計画の想定に対して、5倍近いペースでお申し込みをいただいており、すでにリピートされている方もおられます。これは商品性が受け入れられているという何よりの証拠ですし、ユーザーインタビューを経て、加盟店の悩みに向き合った結果だと思っています。

関根:
今回加盟店から直接話を伺ったことで、経営者が日々煩雑な業務に追われていることを痛感しました。加盟店のオーナーは、「お客さんにいかに喜んでもらうか、ファンになってもらうか」を考えることに時間を割きたいのに、日々の業務に追われできてないというジレンマを抱えておられます。PayPay資金調達というサービスを通じて、資金調達にかかる心理的・業務的な負荷を下げることで、もっと本質的な活動にフォーカスしてもらえるようにしていきたい。加盟店が本当にやりたいことを実現するための手段として、PayPay資金調達を活用してほしいですね。

南:
機械学習の活用という視点では、PayPayのデータを使ってさらに広い分野に展開していきたいと考えています。
一方、PayPay資金調達のプロダクトに関しても、ユーザー視点や事業視点での改善要件をどう技術的に達成するかといったチャレンジも続けていきます。

情熱を捧げられるのは、チームとプロダクトへの信頼があってこそ

みなさんが普段から大切にしていることはありますか?

渡邊:
Believes in our PRODUCT & TEAM
サプライヤーである我々ではなく、ユーザー主語で考えることにこだわっています。このプロジェクトでもその姿勢を発揮できたことが結果につながったと感じます。

大場:
私も同じ言葉を選びました。PayPayには、ユーザーに価値を提供したいという思いを持つ人が多いと感じます。心からそう思えるのも、PayPayのプロダクトなら価値を提供できる、またこのチームなら価値を提供できると信じているからだと思います。

西山:
Ego is not welcome, Communication is necessary
杓子定規や独りよがりな考えだと、ユーザーに求められるサービスからは遠ざかってしまいます。周囲の考えや想いを汲み取った上で最善の策にたどり着くには、クイックにオンラインで話し合ったり、時にはオフィスに集まって集中議論を行ったりすることが重要だと感じています。

中尾:
Be Sincere To be Professional
PayPayはそれぞれ何かしらの専門性を持ったプロフェッショナルの集団です。自分とは違う意見を尊重しつつ自分の考えをきちんと伝えていくことが、PayPayとして最善の判断につながるのだと思っています。

関根:
Work for LIFE, or Work for Rice
何のためにやっているかと言えば、加盟店がイキイキとお店を切り盛りし、自由に本質的な活動にフォーカスすることで、その先にいるお客様も笑顔になってもらうという、ポジティブな循環を生み出したいからです。そのために、加盟店にとって本当に価値のあるものづくりにこだわり、チャレンジしたいですね。

データ与信チームはどのようなカルチャーですか?

渡邉:
ここにいるメンバーも多様なバックグラウンドを持っています。異なる領域からさまざまな個性を持ったメンバーが集まり、協業して、結果を出せるというのは、とてもレベルの高い環境です。リモート環境下、わずか9ヶ月で新規事業をリリースするなんて、普通では考えられないですよね(笑)。多様性を受け入れつつ、個々の力を結集できるチームであることの証であり、PayPayだからこそできたことだと感じます。

西山:
同感です。個の力を最大限に発揮しつつ、難局においては一致団結して解決を図ることで最大の成果を生み出せる点がデータ与信チームの特徴です。一人一人がプロとして圧倒的なパフォーマンスにこだわり、緊張感を持ちながら目の前の業務に向き合える環境が整備されています。

銭:
ビジネスサイドのメンバーと共にサービスを開発しているので、ビジネスの観点から意見や指摘をもらえることが刺激的で学びにもつながっています。市場・顧客・競合といった視点からのフィードバックを、技術的な解決策にどう結びつけるかを一緒に考えていく経験は、エンジニアとして視野を広げる良い機会だと感じています。

発展著しい領域で、金融の新しい形を切り拓く

今後、成し遂げていきたいことやミッションを教えてください!

西山:
我々のように事業を創る立場にある者は、ユーザーの声に最大限に耳を傾け、求められるものを具体的にイメージした上で、社内の関係部署と緊密な連携をとることが求められます。今後もユーザーファーストなサービスにこだわり続けて、PayPay資金調達の利用促進や新たなサービスづくりに邁進していきたいです。
また、データ与信の展開はファイナンスに閉じた話ではないと思っています。私は保険会社出身なので、保険領域で新しいビジネスを立ち上げることを常に視野に入れながら、日々の業務に取り組んでいきたいと思います。

銭:
PayPay資金調達のプロダクトについては、予測モデルから導き出されるオファーの条件など、まだまだ改善の余地があります。データサイエンティストとしては、加盟店により魅力的な条件を提示できるよう、予測モデルを改善していきたいと思います。一方で、新サービスの企画・開発にもチャレンジしてみたいです。

中尾:
私は、このデータ与信の領域にずっと関わっていきたいと思っています。予測モデルを磨き上げていけば、調達金額の上限を引き上げるといったことも可能になります。人による判断に頼ってきた与信の領域で、人よりもスピーディかつ正確な判断ができるような予測モデルを作ることが私の目標です。

最後に、読者へのメッセージをお願いします!

大場:
豊富な決済データを通して、ユーザーや社会、そして金融といった、ミクロからマクロまでの幅広い視点でデータに触れられるところがこの仕事の魅力です。金融の新しい姿を一緒に作っていきたい方には、ピッタリの職場だと思います。

銭:
周りと協力しあって仕事を進めるシーンがとても多いので、巻き込む力が強い方ならPayPayで活躍できると思います。機械学習の領域ではチャレンジしたいことがまだまだ多く残っています。この領域のデータサイエンスに興味のある方は、ぜひぜひお待ちしています。

中尾:
このサービスリリースにあたって、チームメンバーはもちろん、関連部署の方々にも多大なる協力をいただきました。周囲からのサポートを得られる環境であることもPayPayの魅力だと思っています。周囲と協業しながらサービスを生み出していくことを楽しめる方とご一緒できたらうれしいです。

継枝:
今回のPayPay資金調達でも、サービスのユーザーの解像度をしっかり高めた上で、真に役立つサービスを提供することができました。そういう仕事がしたい、そういうサービスに携わりたいという方のチャレンジをお待ちしています!

※募集状況、社員の所属等は取材当時のものです。

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