制約をプロダクトの設計に変える—金融推進・PjM・PdMが向き合ったPayPay残高カードのものづくり

2026.03.30

PayPayグループで働く圧倒的プロフェッショナルに迫るProfessionalsシリーズ。今回登場するのは、「PayPay残高カード」の企画・推進を担った金融推進、PjMそしてPdMの3名。制約の多い金融業界で、それぞれの専門性を生かして新サービスを企画推進する3名の働き方ややりがいについて聞きました。

村上 涼祐

金融推進

新卒でクレジットカード会社に入社し、コールセンター運営やバーチャルプリペイドカード事業の運営を担当。その後、コード決済アプリの立ち上げに携わる。2022年12月にPayPayへ入社。現在は金融推進として、PayPayとPayPayカード間の利用体験に生じていた差分の解消や、PayPay残高カードなどのプロジェクトを企画・推進している。

Weina Li(AKA Ina)

Project Manager

大手インターネット企業にて、PMとしてオンライン決済領域の法令対応プロジェクトを牽引。2023年4月にPayPayへ入社。現在はプロダクトPMOとして、主要な金融関連プロジェクトを複数担当し、プロジェクト全体の推進を担う。

Aishah Azman

Product Manager

前職では東南アジアのポイント・ロイヤルティ・決済プラットフォームの開発に携わる。2023年12月にPayPayの金融サービス部門へPdMとして入社。現在は金融サービス・請求書支払い領域において、PayPayアプリ内のPayPayカードおよび残高カード関連機能のプロダクト開発を担当している。

金融推進・PjM・PdMの仕事と、PayPayで求められる役割や視点

村上
決済やクレジットといった金融領域の仕事は、リスク回避を最優先に安全なサービスを提供する領域です。ただ、法令やブランドルールなど確かに制約はありますが、それを理由にブレーキを踏むのではなく、どう設計すれば前に進めるかを考えるのがPayPayの金融推進の役割です。

金融サービスは人々の生活を変えうるものであり、短期的に整合するかどうかではなく、将来的に持続可能かを見る必要があります。前職でもカード領域に携わってきましたが、PayPayのように自社開発でビジネスとプロダクトがワンチームで動く環境は多くありません。リスクを排除するのではなく、理解したうえで組み込む。その設計責任を担うのが、私たちの仕事です。日々の業務では、法務やオペレーション部門、開発部門等、社内横断的に連携しながら意思決定を行っています。

Ina
ワンチームでものづくりに取り組むPayPayでは、常に多くのステークホルダーが関わります。論点が増えることはもちろん、優先順位が揺れ、責任の境界線が曖昧になることは珍しくない。そのまま進めば、スピードはあっても構造は崩れてしまう。だからこそ、プロジェクトマネジメントに求められるのは「誰がどこまで責任を持つのか」を整理しながら前進できる構造をつくり続けることです。論点を分解し、優先順位を再設計し、必要であれば「今はやらない」と決める。その判断が、結果的にプロジェクトを前に進めます。

前職では法令対応など守りのプロジェクトを多く経験してきましたが、PayPayでは攻めのプロジェクト推進に挑戦できています。圧倒的なスピード感の中で構造を保つこと。それがPayPayのプロジェクトマネージャー(PjM)としての責任であり、やりがいです。

Aishah
プロダクトマネージャー(PdM)の仕事は、制約や要望が増え続ける中で、「何のためのプロダクトか」を定義し続けることだと考えています。PayPayは7,300万人を超えるユーザー(2026年3月時点)が利用するプラットフォームです。小さな仕様変更であっても、多くの人の体験に影響する。だからこそ、WHYとWHATを曖昧にしたまま進めることはできません。私にとってSimplifyとは、複雑さを削ることではなく、本質を見極めて再構成することです。ユーザーが迷わず自然に使える形へ整える。その軸を持ち続けることが、PdMの役割だと思っています。

私自身は商習慣の違う国から移住し、元々経験のなかった新しいドメインに挑戦中です。このスケールの中で意思決定に関わることの難易度は高いですが、その分インパクトも大きい。それがPayPayで働く面白さだと感じています。

PayPay残高カード開発の舞台裏で交差した金融のプロフェッショナリズムとユーザー体験

村上
オンラインショッピングなどでの決済でPayPayの残高から支払うことができるバーチャルプリペイドカード「PayPay残高カード」は、PayPayとPayPayカード両社の仕組みと知見を掛け合わせる挑戦でした。ブランドプリペイド(国際カードブランド付きプリペイドカード)の世界は法規制やブランドルールが非常に厳格で、外から見るよりもできない理由が山ほどある領域です。金融推進の役割は、その複雑な制約をブレーキにするのではなく、プロダクトが前に進むための設計条件へと翻訳することです。

早期リリースという目標に対し、業務設計が追いつかない場面もありました。そこで私は、システムで全てを解決するのを待つのではなく、まずは業務オペレーションでカバーして走り出すという判断をしました。リスクを最小化しつつ、スピードを落とさない。「金融としての守り」を明確にしたことで、プロジェクト全体がどこまで進められるかの前提が揃いました。

Aishah
PdMとしての私のミッションは、村上さんが定義した厳格な金融・セキュリティ要件を、PayPayらしいスムーズなユーザー体験へと翻訳することでした。最大の課題は、PayPayアプリのホーム画面からわずか2タップでカード情報を確認できるという、PayPayカードで実現できているシンプルさをPayPay残高カードでもいかに維持するか、という点でした。

当然ながら、安全性と利便性のトレードオフについては真剣な議論になりました。金融の観点からは、SMS OTP(ワンタイムパスワード)のような追加認証をすべてのセンシティブな操作に適用する案もありました。しかし私は、「PayPayでのオンライン決済を、より身近でスムーズなものにする」という本来の目的に立ち返りました。

そこで、認証を一律に強化するのではなく、ユーザーのリスクを評価するロジックを組み込み、必要な場面と頻度を見極めて強い認証を適用する設計を選びました。その結果、セキュリティ要件を満たしながらも、ユーザーにとってストレスのない、スピード感のある体験を両立させることができました。

Ina
金融推進とプロダクト側がそれぞれの最適解を追求する中で、両者の前提を揃え、プロジェクト全体を前に進める構造を設計する。それがPjMとしての私の役割でした。大規模プロジェクトでは、責任の所在が曖昧なグレーゾーンが必ず生まれます。例えば、認証手法の議論や追加機能の要望が噴出したとき、私はそれらを冷静にDay1(リリース時)とDay2(リリース後)に切り分けました。

各部署と連携して意思決定の材料を揃え「今やること」と「後でやること」を明確にし、合意を形成する。開発チームがデリバリーに集中できる環境を守ることも、PjMの重要な役割です。さらに、品質を担保するためにPayPayのSecurity部門と調整し、前例のない規模でのグループ横断ベータテストを実施しました。部署間の隙間に真っ先に飛び込み、交通整理を行う。その積み重ねが、複雑なパズルを完成させるためのピースになったと思っています。

制約の中で価値をつくるということ

村上
金融推進としては、将来破綻しない持続可能な構造設計に責任を持つことが前提です。その上で、制約を理由に立ち止まるか、それとも発展的な設計に変えるかを考え挑戦し続けることに仕事の醍醐味があります。

日々の実務では、社内横断しさまざまな部門と議論を重ねながら、どこまでリスクを織り込み、どこから前に進めるのかを見極めています。前例のない設計に向き合う場面はこれからも増えていくでしょう。その困難を前向きに捉えられる方とは、ぜひご一緒したいですね。

Ina
PjMの仕事は、構造が揺れたときに誰かが整理するのを待つのではなく、自ら立て直せるかにかかっています。実際の現場では、優先順位の再定義やスコープの切り分け、合意形成といった意思決定の積み重ねが続きます。

プロジェクトメンバーはそれぞれ、見ている景色や守っているものも違いますが、ひとつのプロダクトを生み出すというゴールにそれぞれがコミットできる土台を常に創り続けるのがPjMだと思います。曖昧さをそのままにせず、分解して前に進められる方と、ぜひ一緒に取り組みたいです。

Aishah
複雑さに囲まれても、常にユーザーファーストで考え、「何のためのプロダクトか」に向き合い続けることが、私の仕事です。日々の判断では、機能の優先順位や仕様の細部に至るまで、その目的に照らして意思決定をしています。制約の中でも前に進む設計を考えることに面白さを感じたり、曖昧さを構造に変えることにやりがいを感じたり、複雑さの中から本質を見つけ出すことにワクワクする方であれば、きっと良いものづくりができると信じています。

PayPayでの仕事は、常にさまざまな難しいチャレンジと隣り合わせです。ですが、その難しさの中にこそ、ものづくりの本質、プロダクトを前に進める手応えがあります。挑戦しがいのあるフィールドだと思いますね。

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