前例のない事業を会計で設計する― アジャイル環境で判断するPayPay経理

2026.04.09

PayPayグループで働く圧倒的プロフェッショナルに迫るProfessionalsシリーズ。今回は、急成長フェーズの中で新規事業の会計設計を担う経理の髙木弓子さんに、キャリアの転機、PayPayならではの難易度、そして「判断する経理」へと進化した現在地について伺いました。

髙木弓子(たかぎゆみこ)

経営戦略統括本部経理本部経理部経理2

大学院修了後、公認会計士試験に合格。地方銀行に入行し、経理、リスク管理、アドバイザリーなど複数の部門を経験。国際的な自己資本規制(バーゼル規制)への対応プロジェクトにも参画し、制度設計から当局対応などに携わる。2023年にPayPayへ入社。新サービスの会計検討や上場準備、監査対応などを担当。

「完成された世界」から「変化のど真ん中」へ

新卒で入社した銀行では、完成されたシステムの中で経理業務をしていました。決まった処理があり、イレギュラーなものはほとんどありません。安定していて、正確に回る世界です。ただ、次第に「専門性を、もっと深く磨きたい」と感じるようになりました。

転勤が多く、部署を横断するキャリアは経験できましたが、自分の会計バックグラウンドを軸に勝負する環境ではありませんでした。ジョブ型で、専門スキルそのもので評価される環境に身を置いてみたいと考えるようになりました。そのとき出会ったのがPayPayです。入社を検討していた当時、PayPayはちょうど金融事業に大きく踏み出そうとしているタイミングでした。前職では、グループ傘下にカード・証券・銀行・保険といった事業があり、フロント業務も含めて金融ビジネス全体を俯瞰してきた経験があります。その知見を活かしながら、経理としての専門性をさらに磨ける環境だと感じました。

また、この規模のメガベンチャーで、創業後間もないフェーズから関われることにも魅力を感じました。整っていない部分も含めて、これから形を作っていく過程に身を置けることが、単純に「お祭りのようでわくわくする」と感じたのを覚えています。完成された組織ではなく、これから構造を作っていく組織。自分の判断が、仕組みそのものに影響する環境。それが、入社を決めた理由です。

 2〜3週間で判断するという難易度

PayPayの経理で最も違いを感じるのは、スピードと前例のなさです。銀行では、システム開発は綿密に計画され、スケジュール通りに進みます。しかしPayPayはアジャイル型。前提が変われば、すぐに仕様も変わる。ビジネスとして「やる」と決まれば、2〜3週間で判断を求められることも珍しくありません。しかも、その段階ではまだ前提が固まりきっていないこともあります。後から条件が変わり、再検討になることもあります。経理は本来、正確性を最優先にする仕事です。その性質とスピード感は、決して相性が良いとは言えません。

これまでで特に難易度が高かったのは、PayPay資金調達に関する会計論点でした。国内で同様のサービスを大規模に展開している事例がなく、他社を参考にすることができませんでした。さらに、規約の表現によって会計処理が大きく変わる可能性もありました。貸金のように金利や返済条件の調整として扱うのか、あるいは有価証券のように毎期の評価替えが必要になるのか。わずかな違いが、会計処理全体に影響します。また、会計処理はシステム化と切り離せないため、要件を確定させるためにも規約の完成を急ぐ必要がありました。会計基準を先に確認し、どのような条項が会計処理に影響するのかを整理した上で、企画側にフィードバックすることもありました。会計基準は非常に幅広く、未確定の前提を抱えたまま複数のパターンを想定してプロジェクトを進める必要があります。その中で判断を下すことの難しさと重さは、これまでにないものでした。

それでも、止めない。今は、案件ごとに状況を見極めながら対応していますが、上場を経た今、このような個別最適の対応を続けることが最適だとは考えていません。今後は、サービス企画の段階で必要な情報があらかじめ整理される仕組みを整え、経理としての関与のあり方を進化させていきたいと考えています。個々の案件に都度入り込むのではなく、ビジネスが現実的にスピーディーに支えられる状態を作ることが、これからの役割だと考えています。

プロダクトにも会計視点を

印象に残っているのは、商品券の案件です。商品券がいつ消滅するのか。そのタイミングで自動仕訳を出す仕組みが必要でした。しかし既存システムにはその設計がありませんでした。「なぜ違うのか」「本当にそこまで必要なのか」など、多くの質問を受けました。

制度として会社が守らなければならないことを、経理のこだわりではなく、会社としての責任として理解してもらう必要があります。お金が動く場合は全て会計処理の検討が必要となります。PayPayは、決済や金融関連というサービスの性質上、サービス設計と会計処理を切り離して考えることはできません。債権管理のあり方や、発生時点・消滅時点の整理、契約との整合性など、プロダクトの設計に踏み込む仕事です。

 「判断する経理」への進化

銀行時代は、定型業務が中心でした。今は、イレギュラーな状況で方針を立て、判断する仕事が増えています。ミーティングの中で多くの情報を聞き取り、その場で判断する。小さな判断は現場で任せてもらえます。何が小さな判断で、何が経営判断に近いのか。その境界線を見極める力は、この環境で鍛えられました。また、自分の判断や方針が採用されることや、何かあった際に意見を求められる機会が増えたことも、大きな変化でした。それは、自分自身の成長を実感するきっかけとなり、確かな自信にもつながっています。

以前は、人と交渉することに苦手意識がありました。議論の中で「それは経理が決めることじゃない」と言われたこともあります。その一言で、自分の役割を整理し直しました。今は、どこまでが経理の責任で、どこからが他部門の領域かを意識しながら対話しています。定型業務を正確に回す経理から、変化の中で判断する経理へ。難易度は上がりましたが、確実にプロとしての視座は広がりました。

どんな人が向いているか

PayPayの経理に向いているのは、勉強を続けられる人だと思います。本や会計記事を読み、あるべき姿を理解しようとする姿勢は欠かせません。そして何より、決まっていないものを形にすることを楽しめる人。決まっていないものを持ってこないでと断るのではなく、それを一緒に整理し、前に進めることに面白さを感じられる人と働きたい。

アジャイルな環境の中で、統制を守りながらスピードに応える。それが、PayPay経理のプロフェッショナルだと思います。

※募集状況、社員の所属等は取材当時のものです。

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