PayPay Inside-Out People and Culture

PayPayでアクセシビリティを考える

2021.12.03

見えないバリアと2人乗りベビーカー

「バリアフリー」というと、車いす対応のトイレや、エレベーターが「どこかに」設置してある施設などがすぐに思い浮かびますが、筆者1人で出かけるときには、「バリアフリー」の存在を意識していませんでした。ところが、「自分1人で、2人乗りベビーカーに子供を乗せて電車に乗り、新宿駅でJRから京王線に乗り換えること」をしようとすると、それがいかに難しいか、身をもって感じました。なにしろ、2人乗りベビーカーは10キロ以上あり、そこに幼児2人の体重をあわせると30キロになり、それを持ち上げて階段を上がるなどおよそ不可能なので、すべてのルートが「完全バリアフリー」でないと、幼児を連れて1人での外出はムリ、なのです。完全バリアフリーな乗り換えルートを調べあげ、向かった先のエレベーターが「運転休止中」だったりすると、ガーン! 2人乗りベビーカーで外出するまで、エレベーターが使えないことでこんなにも困るなんてことは、想像もしなかったなあと。行きたい場所に行くことができないのは悲しいものです。

障害者にもやさしいサービスってなんだろう?

さて、12月3日は国際障害者デー。障害者基本法では、12月3日から9日までを「障害者週間」と定めています。障害者週間には、障害者の福祉についての啓蒙などを目的としたイベントが各自治体を中心に行われていて、ポスターや標語などを目にされたこともあるのではないでしょうか。

今日は、国際障害者デーにちなみ、障害者にもやさしいサービス、について考えてみたいと思います。

決済サービスを提供するPayPayは、スマホのアプリ上でサービスを提供しています。そのため、店舗にスロープやエレベーターを設置するといったバリアフリー対応は、PayPayでは無関係なものとなります。

では、そもそもスマホは、そして、スマホ上で提供しているPayPayのアプリは、障害をもつユーザーの方が利用しやすいサービスになっているでしょうか? そういうふうに考えると、障害をもつユーザーの方がどのようにスマホを使っているのか、スマホを使ううえでどのような不便さやバリアがあるのか、なかなか想像がつかないところです。

実は、スマホには、視覚、聴覚などに障害がある方も快適に使えるようにするための「アクセシビリティ機能」が用意されています。設定メニューの「アクセシビリティ」ってなんだろう?と思いながら、開くことも利用することもなかったのですが、開いてみると、文字を音声で読み上げる機能、画面表示を拡大する機能、サウンド認識機能、など多くの機能があります。こうしたアクセシビリティの機能があれば障害をもつユーザーの方もスマホを快適に使えるのだということ、そして、スマホにはアクセシビリティの機能が標準装備されている、というのは大きな気づきでした。

テキスト読み上げ機能(VoiceOver)を初体験して気づいたこと

では、スマホのアクセシビリティ機能を使えば、たとえば、目の不自由な方はPayPayアプリを快適に使うことができるのでしょうか?

VoiceOverというテキスト読み上げ機能をオンにしてみると、画面上のフォーカスのあたったテキストを順によみあげていきます。なかなか便利なのですが、VoiceOver機能をオンにすると、それぞれ、特殊なジェスチャが必要になるため、いつものスマホの操作がいつものようにはできません。たとえば、起動している別のアプリを閉じて、PayPayアプリを開く、といういつもなにげなくやっている操作ひとつとってもなかなかうまくいかず、5分くらいかけてようやくPayPayアプリを開くことができるといった感じです。PayPayアプリ上でVoiceOverを使ってみると、画面には、多くの情報がつまっていて、目でみるのと同じ量の情報を、VoiceOverの読み上げ機能で得ることはできませんでした。もちろんVoiceOverの操作に不慣れなところにもよりますが、操作したいボタンやメニューのところにうまくフォーカスがあたらなかったり、アイコンやメニューを単に「ボタン」と読み上げるだけだったり、画像部分の情報が得られなかったりしました。

アプリのアクセシビリティ

スマホアプリでの決済サービスの利用に、物理的なバリアはないかもしれません。ですが、目の不自由な人がPayPayのアプリを利用して快適に支払いができるようなサービスになっているか?さらには、そうした人が困難なく支払いできる手段が世の中にあるか?というと、なかなか実現できていない部分があるような気がします。

PayPayでは、便利でだれからも利用しやすいサービスを目指して、アプリのアクセシビリティ向上に向けた取り組みを行っています。これまでには、文字サイズを変更できる機能の新設や、リンクやボタンの色を変更してコントラスト比の改善などを行ってきており、また、前述のVoiceOverをつかってPayPayのアプリが快適に操作できるかどうかのアクセシビリティ検証なども行っています。PayPayのアクセシビリティの取り組みはまだはじまったばかりですが、少しずつ、すべての人にやさしく、利用しやすいサービスを提供できるようになればいいなと思っています。

文:Tomoko Mishima(法務コンプライアンス部)