PayPayグループで働く圧倒的プロフェッショナルに迫るProfessionalsシリーズ。
今回は、データサイエンティストの南 賢太郎さんに、印象的だったプロジェクトやデータ活用で大切にしていることなどを伺いました。
南 賢太郎(みなみ けんたろう)
金融事業統括本部 金融戦略本部 金融戦略部 Merchant Creditチーム リーダー
統計学で博士号を取得。AIスタートアップで研究者として機械学習の基礎研究や金融AI分野の研究開発に携わったあと、2023年12月にPayPayに入社。現在は加盟店向けの与信モデル開発などに携わる。
研究の世界からPayPayへ
これまでのキャリアを教えてください
もともとは工学部でシステムの分野を専攻していました。ですが、昔から数学や統計などの理論分野に関心があり、世間でデータサイエンスが流行りだしたのを機に、専門を統計学へ変えました。最終的に統計学で博士号を取得し、AIスタートアップに就職して企業研究者としてキャリアをスタートさせました。
入社した企業はAIコンサルティングを行っていたため、研究者として各企業のAI推進を支援していましたが、金融業界のお客様との出会いで、金融AIという領域に関心を持ちました。実は、金融領域は内部で用いられる数学理論が高度で、物理学や数学を専攻している方の就職先としても人気です。私も数学的な面白さに惹かれ、デリバティブ(株や債券など、一般的な金融商品から派生した金融商品)の一種であるオプション取引(ある商品を、将来の特定時点において売買する権利をめぐる取引)の値付けをディープラーニングで行う仕組みの研究などを論文化し、国際会議で発表するなど、研究者としては充実した日々を過ごしていました。

PayPayへ入社した経緯は?
研究者として成果を出しても、学術的な成果がすぐには製品化されないギャップに悩んでいました。自分が研究段階から携わった製品がユーザーのもとへ届き、事業としてグロースする様子を当事者として経験したいと思い、金融領域の事業会社を軸に転職活動を始めました。
転職活動中、「PayPayで機械学習を用いた与信プロジェクトが立ち上がっている」と聞き、PayPayに興味がわきました。PayPayにデータ系の人材がいるイメージはなく、知り合いの研究者が働いている会社に加わる手もあったのですが、「周りにデータサイエンティストがいない環境で、新たな挑戦がしたい」と思い、あえてPayPayを選びました。
プロとして、データの「限界」に向き合う
現在の業務とミッションを教えてください
現在は金融戦略部のMerchant Creditチームに所属し、加盟店に向けた金融サービス開発のための与信モデル開発や既存モデル改善などに取り組んでいます。具体的には、入社してから一貫してかかわっている加盟店向けサービス「PayPay資金調達」における、審査用の予測モデル開発・改善などが主な役割です。機械学習の力でPayPayの金融サービスをサポートし、加盟店の課題を解決できる革新的なサービス創出に貢献するため、日々業務にあたっています。
プロジェクトで印象的だったことは?
チャレンジングでありつつ面白かったのは、日本の金融機関で採用されがちな数理モデルと異なるフレームワークを採用したことです。例えば、顧客の信用リスクを可視化するクレジットモデリングという分野では、PD/LGD/EAD(デフォルト率・デフォルト時損失率・デフォルト時貸出残高)を用いて予測損失を算出する枠組みが有名です。
ですが、PD/LGD/EADの枠組みは融資を行う際に有効なもの。PayPay資金調達では、諸外国で見られるRBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス:将来見込まれる売り上げをもとに資金を提供し、手数料とともに元本を返済してもらうサービス)に近い概念が採用されています。新興サービスであるRBFの世界に定番の数理モデルはなく、サービス内容を踏まえ「発生している売り上げに対し、どれくらいの返済確率があるか」を予測する独自モデルを開発しました。結果、申込から最短数分かつ担保・保証不要での資金調達が可能になり、ユーザーの皆さまからもご好評いただいています。

もちろん、PayPay資金調達というサービスに携わる以上、モデル研究だけが役割ではありません。限られた人員やリソースで期日までのリリースを実現する苦しみや、社内ステークホルダーに対する説明の難しさなども感じました。ですが、未知のモデルを開発するワクワク感と、自分の理論が詰まったサービスをユーザーに届け、事業をサポートしたいという想いが支えとなり、無事リリースにこぎつけられました。ユーザーの本質的なニーズへ向き合うため、データサイエンティストの立場ながらユーザーヒアリングの場に同席するなど、ユーザー目線での開発を徹底した結果、想定の5倍以上のお申し込みをいただいています。
関連記事:機械学習モデル×ユーザーファーストで、想定の5倍の成果を生んだ「PayPay資金調達」
PayPayでの業務で大切にしていることはありますか?
データサイエンティストとして「Be Sincere To be Professional」の意識で働いています。一般的に、データサイエンティストというと「データ分析から隠された秘密を暴き、問題を解決する」という印象が持たれます。漫画などに出てくるデータキャラが分かりやすい例ですね。
ですが、企業でデータ活用する場合には、データから「言えないこと」や、データを扱う際には主観が必ず入り込んでしまうことなど、データの限界を知り、限界に自覚的であることが求められます。実際、データからサービスの成長度予測を求められたと仮定した場合、正しくデータを扱っていたとしても、定義やデータの解釈次第で成長度は1%にも、10%にもなってしまうからです。

また、上記の例で言えば、現場がなるべく高い成長度を予測してほしいと願っているケースが大半です。現場が「求める」データだけを意図的に抽出することも可能ですが、作為的なデータは後で効果検証をする際などに現実との大きな乖離を生み出し、最終的には損失につながります。私はデータのプロとして「データ」と「主観」は必ず切り分け、データの限界を伝えつつコミュニケーションするようにしています。
「興味深い問題」がPayPayには転がっている
データサイエンティストから見て、PayPayはどんな会社ですか?
PayPayは、データを活用した事業開発の可能性が広がっている会社です。6,700万人(2024年12月時点)のユーザーや加盟店から得られた膨大なデータにアクセスでき、決済に限らずP2Pやクーポン利用、資金調達など、多様なサービスにおけるユーザー行動も分析できます。質の高いデータを大量に持っているだけでなく、データの鮮度も高い。国内屈指のデータ保有企業だと自負しています。
また、「何事も必ず数字で語る」文化が根付いているため、データサイエンティストにとって働きやすい会社です。一方、意思決定におけるデータの重要度が高いがゆえに、周囲から「なんでも数字を出してくれる人」と過剰な期待をされる場合もあります。期待が高いからこそ、先ほど述べたデータの限界に自覚的であることが求められる環境でもあります。
今後の目標やビジョンを教えてください
今後は、既存のPayPay資金調達をより使いやすいサービスにするため、予測モデルやサービスの改善に努めます。同時に、PayPay資金調達で得た知見やノウハウを活かし、加盟店向けの新しいサービスを立ち上げたいです。私の理論や熱意が体現されたサービスをもっと多くの方にお届けしたいですし、PayPayのサービスを通じて革新的なキャッシュフローを生み出したいという思いもあります。そして全社で掲げる「金融シフト」を通じ、金融プラットフォーマーとしての地位確立に貢献したいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします!
個人的に、データサイエンティストにとってのやりがいは「解くべき問題の面白さ」に左右されると思っています。その点、PayPayは既存の金融機関が実現していないサービスや、革新性ゆえに発生するPayPay固有の問題などに挑戦しており、研究機関や論文には解のない問いを突きつけられます。ですが、解の見えない問題だからこそ解き明かす面白さがあり、導き出した答えを通じて多くのユーザーを幸せにできる環境もあります。ぜひ、私たちと一緒に新しいチャレンジに取り組みましょう。
※募集状況、社員の所属等は取材当時のものです。

