PayPayグループのビッグプロジェクトの舞台裏に迫るProject Storyシリーズ。
本シリーズでは、重要プロジェクトにスポットライトを当て、その裏にあった障壁や各担当者のこだわりなど現場でのリアルなストーリーを、担当者へのインタビューを通じてお届けします。
今回ご紹介するのは、2025年3月にリリースされたPayPayカードにおける「生成AIを活用した支払い遅延者向けチャットボット」プロジェクト(生成AIを使ったお支払い遅延者に対する解決提案チャットボット。以下、「生成AI活用プロジェクト」)。本号では、プロジェクトを推進したPM、ビジネス担当者、エンジニア、デザイナーに、プロジェクトの全貌とユーザーファーストな姿勢で向き合ったそれぞれの想いをお話いただきました!

河野 勇輝(かわの ゆうき)
PayPayカード テクノロジー統括本部 決済プロダクト本部
スタートアップでデータアナリスト、HR系大手企業でエンジニアとして開発経験を経て、2020年PayPay入社。PMとして送金のグロースとユーザー体験の改善などに携わった後、2023年11月PayPayカードに入社。

山﨑 千恵(やまさき ちえ)
PayPayカード株式会社 クレジットマネジメント統括本部 債権管理企画本部 回収戦略企画部 回収戦略企画グループ
2014年KCカード株式会社(現:PayPayカード株式会社)に新卒で入社。カスタマーサポート職として債権管理の現場での延滞債権に対する電話督促や未収債権の回収業務に伴う事務業務に従事。その後、企画職として管理回収分野の新規施策の立案・実行などを行う。

中村 優利(なかむら ゆうと)
PayPayカード株式会社 テクノロジー統括本部 DX推進本部 DX開発部 DX開発1グループ
ユーザーとして価値を感じていたPayPayあと払い(現:PayPayクレジット)開発に携わることに魅力を感じ、2023年新卒でPayPayカードに入社。エンジニアとしてシステムの開発・運用やWeb上のチャットボットの機能改善などに従事。

田中 淳子(たなか じゅんこ)
PayPayカード テクノロジー統括本部 グロースプロダクト本部 プロダクトデザイン部 UIUXグループ 3
新卒でヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)にデザイナーとして入社。メール、ニュースなどの様々なサービスのUI設計担当として携わり、その後、2023年7月からPayPayカードへ出向。2024年3月に転籍。デザイナーとして、主に債権管理のDX化に関わる。同時に、UI/UX改善やミニアプリTOP上の機能編成などを行う。
PayPayカード初の生成AI活用プロジェクト
プロジェクト概要と発足の経緯を教えてください
山﨑:
PayPayカードはいまや発行枚数1,254万枚を突破(2024年9月末時点)し、たくさんの方の決済手段の1つになっています。利用者数増加に伴い、オペレーター側では通常の問い合わせ対応に圧迫され、お支払い遅延者への架電業務等なかなか手が回らない状況が発生していました。引き落としに失敗したユーザーのみなさんの不安を解消させるため、なんとかオンライン上で課題解決できる仕組みを作りたい。そのような思いがきっかけです。
河野:
事業側が抱える課題に対して、プロダクト側は、初めて引き落としができなかった方や、未払い分の支払いについて相談したい方に向けて、納得のうえ入金していただける体験を提供することを目指し、プロジェクトを推進しました。単なるお支払い方法案内ではなく、なぜ引き落としが失敗しているのかまでを説明し、理解した状態でお支払いいただくことを意識し、チャットボットを作り上げています。

そもそも、今回のプロジェクトはPayPayカード内でも過去事例のない生成AIを活用したものでした。そのため、私たちが目指すゴールに対して発生しうるリスクは何か、全く予測不可能で、整理すべき項目が沢山ありました。2024年9月プロジェクト始動以降、週次で経営層と話し合いを繰り返し、会社として受容できる形で実現へと進めていきました。
プロジェクト内でのミッションを教えてください
河野:
PMとして、生成AIを使い、いかに価値を出すプロダクトができるか。そして、推進するにあたってどう経営層と社内合意をとるかをミッションにプロジェクトを進めました。

山﨑:
私のミッションは、事業側の人間としていま支払い遅延者に対しての架電業務をおこなっているオペレーターと同レベルでのユーザー対応ができるチャットボットを作ることでした。
中村:
バックエンドチームでは、生成AIの回答を生成するルート部分の開発を行いました。特に「回答精度の高さ」の追及は、課された一番のミッションでした。
田中:
デザイナーとしては、支払い遅延者がスムーズな操作で悩みを解消できるのと同時に他ユーザーの妨げにならないUI/UXという、2つの視点を配慮しデザインする必要がありました。
職種を越え三位一体となって推進されたプロジェクト
プロジェクトを振り返って、特に大変だったのはどのようなことでしたか?
河野:
開発においては、生成AIを活用したチャットボットによってユーザーへの問い合わせ対応が可能となる。自分の中でその根拠は何なのか整理が必要でした。そして、最終的にオペレーターと同水準での回答精度が実現できる点も要件として満たさなければならなかった。この2つは特にチャレンジングで常に手探り状態で進めていましたね。
同時にAIの性質上、回答によっては、ハルシネーション(事実と異なる情報を生成する現象)に起因する許容できない内容もあったんです。そこで、生成AIを活用する上で発生する課題を整理し、「どのようなリスクがあるのか」「その中で許容できるリスクとできないリスクは何か」などの明確な定義を持って社内合意を得るプロセスを進めました。
具体的には、発生する課題をLv1からLv3に分類し、レベルごとに会社への影響を整理しました。度重なる議論の結果、「Lv1の課題であれば許容できる」という社内合意を得ることで、プロジェクトを進めていきました。
最終的には、生成AIが自由に回答を生成するのではなく、生成AIが用意された回答を選択する方式へと切り替えることで、リスクを抑えながら生成AIの利点を活用する方針を作り出すことができました。
山﨑:
今回のチャットボット提供に関しては、割賦販売法・貸金業法や自主規制などの法律が関わる部分もありました。回答を準備するにあたって、表現や言い回しなど配慮が必要な部分も数えきれないほどあったんです。その点をケアするために、デザイナーの田中さんにデザインなども工夫してもらったり、メンバーと何度も話し合って、結果的に課題となる部分を解決し、リリースにつなげることができました。
中村:
新規システムでもあり、チャットボットのシステムの設計から実装まで一貫して関わりました。中でも、バックエンドでは回答精度を高めることがチャレンジでした。今回、生成AIが用意された回答を選択する方式を採用したのですが、AWSサービスを使ったアーキテクチャで何が一番回答精度を高められるのか、複数のパターンで検証を重ねました。また、回答精度だけでなくユーザー体験にもこだわりチャットフローの構築やAPIの設計・開発ではレスポンス速度改善も行いつつ開発に注力しました。
PayPayカードの価値をユーザーのみなさんに届けたいという気持ちで、生成AIというホットな分野で都度調べながら実装しました。自分自身取り組んだことのない領域という難しさもありましたが、PMの河野さんが漫画の内容を交えてたまに熱いことをおっしゃるのも個人的にモチベーションにつながり、楽しんで開発に取り組むことができました(笑)。

田中:
生成AIによるハルシネーションが起きないようにUI/UXの部分でも重点的に検討しました。多くのFAQを用意し、UI上でもある程度絞りこんだ形で質問の選択肢を提示し選べるようにしています。
UI上に表示させる質問の選択肢選定にあたり、ユーザーからの問い合わせ内容のタイプ分けを行い、回答内容も精査した点、時間のかかる作業ではありましたが、結果的には、「どんな質問をしたらよいかわからない」「急いで解決したい」などのユーザーのニーズにも寄り添うことができたんじゃないかと思います。
より安心してPayPayカードを利用できる世界実現を目指して
リリース後の状況やユーザーからの反応はいかがでしょうか?
河野:
2025年3月、生成AIチャットボットをリリースできました。日々支払い遅延者と向き合っているオペレーターにも協力いただいたテストを繰り返し、ほとんどの未払い関連の質問に回答できるものになっています。
本件に関しては、プロジェクトのゴールを「支払い遅延者の疑問を解消し、ユーザーへスムーズなお支払いを促す」(入金約束者を増やす)という軸に絞り、ビジネス、プロダクト、デザイナー、職種の枠を超えた協力体制を築き、互いに補完し合いながら開発を進めることができたことが結果に結びついているんじゃないかと思います。
山﨑:
リリース後、不安や疑問を解消できたユーザーからチャットボットにたくさんの「ありがとう」のメッセージがきていたのはとても嬉しかったですね。

仕事をするうえで大切にしていることはありますか?
河野:
本プロジェクトにおいては、PayPay 5 sensesの「Ego is not welcome, Communication is necessary」ですね。軸を定め同じベクトルを向いて、みんなで進めることができたからこそ成功したプロジェクトでした。
中村:
「Ego is not welcome, Communication is necessary」 ですね。
ユーザーに価値を感じていただけるシステムを届けるためには様々な視点からコミュニケーションを重ねる必要があると思ってます。
田中:
プロフェッショナルとして妥協せず誠実に自ら機会や新しい価値を創り続け、最後までやり抜くこと「Be Sincere To be Professional」を大切にしています。

今後、成し遂げていきたいことやミッションを教えてください
山﨑:
今回のチャットボットは、支払い遅延者向けに限定せず、通常の問い合わせなどへも今後展開ができると感じています。生成AIを活用して、ユーザーの課題解決につながるシステム作りにチャレンジしていきたいです。
河野:
今回のプロジェクトもリリースして終わりではありません。いまは、生成AIを活用してお支払いに関する分野だけでユーザーの不安を解消するっていう体験を提供していますが、例えばキャッシングやリボルビングなどの利用時に関しても、より安心して使ってもらえるような体験を提供していきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします!
山﨑:
ユーザーファーストを第一に、私たちは日々課題に立ち向かっています。PayPayカードは金融の枠にとらわれずに様々なトライができる会社です。たとえ金融の深い知識がなかったとしても、積極的に行動し、新たなチャレンジができる環境があります。
河野:
本プロジェクトで肝となる精度の部分、実はPMである私もスクリプトを書いて検証にも加わっていました。職種の枠にとどまらず、目的達成のためにいろんな領域に踏み込むことができる柔軟な会社です。オーナーシップを持って推進できる方とぜひご一緒したいです。
田中:
PayPayカードのモノ作りにおいては、「ユーザーが解決したい課題は何か」「課題を解決することで何を実現したいか」等の整理、確認するタイミングからプロジェクトへ参画し、デザイナーとしてUI/UXを作り上げていくことができます。
金融の知識も大事ですが、操作に不安なユーザーの気持ちに寄り添う事が第一だと思います。課題を見つけ、解消した際には、それが肌で感じられるのがPayPayカードでの仕事の醍醐味です。
中村:
PayPayカードではビジネス、デザイナー、エンジニアの距離が近く、三位一体となってシステム開発を進められる環境があります。また、金融と聞くと堅いイメージで新しい技術の導入が遅いと思われがちですが、実際には生成AIプロジェクトを例に見ていただけるように、モダンな技術スタックでアグレッシブな開発ができます。
新しいことに挑戦したい方、未来のキャッシュレス社会を作りたい方、ユーザー視点を持ちながら技術を追求したい方、お待ちしています!

※募集状況、社員の所属等は取材当時のものです。

