世界約50カ国の国と地域から集まった個性豊かなプロダクトメンバーたちの声を通して、モノづくりへの姿勢や雰囲気をダイレクトにお伝えするTech Talksシリーズ。
今回は、PayPay証券の現場で活躍するバックエンドエンジニアの小林さんに、直近で携わった「価格基盤刷新プロジェクト」や開発に対する想いや働く環境など、PayPay証券のリアルを伺いました。
小林 和也(コバヤシ カズヤ)
Backend Engineer, PayPay証券
スタートアップにてモバイルアプリ開発エンジニアとしてキャリアをスタート。2018年に楽天へ入社し、楽天ペイの開発に携わる。その後、2019年にPayPayへアプリエンジニアとして入社。PaaS SDK、ミニアプリプラットフォーム構築、PayPay Open API、Amazon/Apple統合などを推進。新たな領域での更なる挑戦を目指し、2023年11月にPayPay証券へ出向。現在はバックエンドエンジニアとしてキャリアを追求中。
価格基盤リプレイスの概要
Security Backend Teamでテックリードを務める小林です。
今回ご紹介するのは、既存のPayPay証券の価格基盤システムを刷新するプロジェクトです。
価格基盤は、情報配信ベンダーから市場価格を受信し、提示価格を算出したうえでPayPay証券の別のシステムに公開する役割を果たしています。PayPay証券では情報配信ベンダーを通じて配信される市場価格を使い、実際にユーザーが株式などを売買する際の提示価格を算出しています。今回私はメインエンジニアとして、新価格基盤システムの実装や設計を担当しました。

現価格基盤が抱える技術的な課題
従前の価格基盤は、少数の銘柄サポートを前提に設計されており、今後のPayPay証券のビジネス拡大に対応するには限界がありました。
具体的には、以下の技術的な課題がありました。
- 毎秒RDBMSに書き込まれる価格情報が、性能上のボトルネックとなり、提示価格の表示がPayPay証券のシステム全体に影響を及ぼす可能性がありました。
- セルフマネージドのCassandraや固定IPのEC2でサービスが稼働しており、冗長性やメンテナンス性に課題がありました。

これらの技術的な課題を解決しつつ将来的に情報配信ベンダーが増加した場合にも対応できるよう、事業継続計画(BCP)の観点も改善していくことが、本プロジェクトのゴールでした。
具体的な開発と実行のステップ
課題を解決するため、既存の価格基盤システムに手を入れるのではなく、ゼロからの再構築を選択しました。初期段階では、新価格基盤の技術的な基盤を先行して実装しました。その後、Dealing/Price チームのエンジニアたちがプロジェクトに参画し、専門知識を活かした実装を行っていきました。
開発フェーズでは、以下の点が重要でした。
- 複雑なビジネスロジックとの連携: 価格基盤には予想以上に複雑な業務ロジックが組み込まれており、実装を進めながら証券ドメインのエキスパートと頻繁に議論を重ね、理解を深めました。
- 技術的な挑戦への対応: 大量のイベントをリアルタイムに処理する必要があり、技術的な難易度が高いため、Techアーキテクトと毎週課題を共有し解決策を検討しながら開発を進めました。
- 多岐にわたる役割: 私は証券ドメインと技術、双方のエキスパートとの緊密なコミュニケーションを取りつつ実装も担当し、プロジェクトを推進する役割を担いました。
- コミュニケーションの重要性: プロジェクトは順調に進むばかりではなく、多くの困難に直面しましたが、その都度関係者と積極的にコミュニケーションを取り、不明点を一つずつ解消していくことで前進しました。複雑な既存システムをプロジェクトメンバーとともに理解することは困難でしたが、さまざまなメンバーの協力を得ることで乗り越えることができました。
このようなプロセスを通じ、技術的な課題解決だけでなく、ドメイン知識の習得やコミュニケーションスタイルの最適化を図りながら、プロジェクトを推進していきました。

技術的なチャレンジ
今回のプロジェクトにおいて、大きく3つのチャレンジがありました。1つ目は、大量のデータ処理があげられます。 情報配信ベンダーが配信する市場価格のデータ量はとても多く、コストも抑えながら保持し処理をするのはハードルが高かったです。実際、 それぞれ何十項目ものフィールド値を受信して、そこから複雑な計算を経て価格などが得られています。具体的には、価格データを圧縮した上で保存し、KVSに価格情報を保持していますが、定期的に他のストレージに退避させるなどの工夫をしています。
2つ目は、リアルタイム性です。 価格情報は後ほどバッチ処理すれば良いという性質のものではなく、リアルタイムに処理を完了し、ユーザーへの提示価格を更新し続ける必要があります。
これを達成するために複雑なビジネスロジックの一部を書き込み時ではなく読み込み時に移す、データを間引くなど、さまざまな工夫をしてリアルタイム性を達成しています。
また、このリアルタイム性が損なわれると、市場価格とPayPay証券の提示する価格に乖離が生じ、価格差を使った攻撃や不正に使われる可能性もあり、確実に担保する必要がありました。
もう1つは、複雑なビジネスロジックです。市場価格を基に顧客に提示する価格を算出しますが、この算出ロジックはさまざまな金融工学の理論を元にした複雑なものです。また比較的歴史のあるシステムであり、コードの可読性やドキュメント不足なども課題としてあり、理解に時間がかかりました。現在の価格基盤を将来的には廃止することを考えており、この複雑なビジネスロジックを正しく新しい基盤に移行するのは、価格基盤というシステムの重要性を考えると難易度が高かったです。

プロジェクトの成果
2025年4月新規開発した価格基盤を本番環境にデプロイし、稼働させることに成功しました。現行の価格基盤が抱えていた課題を解決し、PayPay証券のビジネス成長に不可欠な基盤を確立したと言えます。
- スケーラビリティ: 従来のRDBMSへの書き込み集中による性能ボトルネックを解消し、取引量の増加や取扱銘柄の拡大に柔軟に対応できる基盤を構築しました。
- 可用性と保守性: フルマネージドなサービスを使うようになったことにより冗長性やメンテナンス性を向上させました。
- トレーサビリティ: 過去の株価データ、その他関連データ含め保存方法に関して改善を行うことができました。
- 事業継続性: 将来的な情報配信ベンダーの増加にも対応可能な設計とし、BCPの観点を改善しました。
現在、新しい価格基盤と現行の価格基盤が生成する価格を比較検証するシステムを構築し、慎重に動作検証を行っています。この検証システムは、新しいシステムへの安全な移行を担保するために重要な役割を果たします。並行して価格基盤を参照する各システムが、新旧どちらの価格を利用するかを切り替えるための機能開発も進めています。
この検証フェーズが完了次第、段階的に新価格基盤への移行を進める予定です。私自身もエンジニアとして今回のプロジェクトを通じて、証券ビジネスにおける価格情報の重要性と、それを支える基盤技術の勘所を改めて認識することができました。
今後の展望
刷新した価格基盤を本番環境で稼働させ、さらなる成長に向けた重要な一歩を踏み出しました。今後はこの新しい基盤を軸に、システムの段階的な移行と展開を進めていきます。
このプロジェクトを通じて、バックエンドエンジニアとして技術的な成長を実感できたことはもちろん、証券業界ならではの面白さも深く理解することができました。私自身、PayPay 5 sensesの中では「Be Sincere To be Professional」を大切にしており、その場しのぎの対応ではなく本質的な解決を目指して考え、実行することを常に心がけています。この貴重な経験を活かし、より一層PayPay証券のサービス向上に貢献していきたいです。

読者へのメッセージ
PayPay証券では、挑戦的なプロジェクトに主体的に関わる機会が多くあります。まだ成長フェーズであるからこそ、自身の技術力を活かしサービスの根幹となる部分から作り上げていく、他ではなかなか味わえない経験ができます。困難な課題も多い一方で、それを乗り越えた時の達成感は格別であり、エンジニアとしての確かな成長を実感できる環境です。
新たな技術領域に挑戦したい、自身の力でサービスを大きく育てていきたいという方にとって、PayPay証券は最適な舞台となるはずです。ぜひ、ご一緒しましょう!
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