PayPayグループで働く圧倒的プロフェッショナルに迫るProfessionalsシリーズ。年間に数多くの機能がリリースされるPayPayのBtoB向けサービスを、裏側から支えているのが、最小の運用コストで最大の利益を生むための業務設計とフロー構築をトップスピードで支援するプロフェッショナルたちです。今回登場するのは、サービス業という異業種から飛び込み、現在では法人管理領域でAI活用や自動化を牽引する鶴田龍一郎さん。いかにして事業の成長基盤を担う存在となったのか。急拡大する事業を止めないために、現場で下した戦略的決断と、そのキャリアのリアルに迫ります。
鶴田 龍一郎(つるた りゅういちろう)
事業推進統括本部 事業推進本部 加盟店管理部 法人管理リーダー
多店舗運営のマネジメントで人材育成と運営基盤づくりを経験した後、2019年4月にPayPayへ入社。加盟店の途上管理体制を構築し、現在は資金調達・ビジネスアカウントをはじめとした法人管理領域をリード。事業成長を支える仕組み化と改善を推進している。
「世界一」を目指す場所で、事業の構造を設計する
これまでのキャリアと、PayPay入社のきっかけを教えてください
私のキャリアの原点は、IT業界でも金融業界でもなく、サービス業の現場にあります。約10年間、店舗運営や数十名規模のスタッフマネジメントに従事していました。現場のオペレーションがいかに大切か、人が動く組織の難しさと面白さはどこにあるのか。そうした「現場のリアリティ」を肌で学んだ期間でした。次のキャリアを考えたとき、もっと事業の成長に近い場所、社会に大きなインパクトを与える場所で働きたいという思いが強くなりました。そこで出会ったのがPayPayです。当時、すでに世の中には多くの決済サービスがありましたが、PayPayだけは、現金を超え、世界一を目指すと公言していました。単なる便利ツールの提供ではなく、日本の金融インフラそのものを塗り替えようとする気概。かつてブロードバンドが普及したときのような熱狂を、ここなら生み出せると直感しました。
実際に働き始めて感じたのは、PayPayにはリスクを見極めながら、最短距離で正解に辿り着くための圧倒的なスピード感があるということです。異業種からフィンテックの世界に飛び込んだことで、最初は専門用語や業界特有の考え方に戸惑う場面もありましたが、そこで意識したのは、言葉を一つずつ覚えるのではなく、その言葉が全体の中でどんな役割を持つのかを構造として捉えることでした。例えば、割賦販売法に基づく加盟店管理も、最終的に守るべき状態を理解することで、点ではなく線で理解できるようになりました。こうした向き合い方を続けることで、これまでのマネジメント経験を、より大きなスケールで活かせると確信しました。

現在の役割とミッションについて教えてください
現在は法人管理チームのリーダーとして、加盟店管理やPayPay資金調達など、金融領域を支える業務推進を担当しています。ここでいう業務推進とは、単なる現場作業の効率化にとどまりません。ユーザー体験を裏側から支える業務プロセス、データ構造、さらには判断ロジックまで含めた「事業基盤そのもの」を設計・改善していく役割です。急速な成長に耐えられる強固な土台を構築すること。それが私のミッションです。
事業を支える成長基盤をどうつくるか
直近で取り組んだプロジェクトについて教えてください
直近で私がプロジェクトの推進役として取り組んだのは、資金調達サービスにかかるオペレーション業務をシステム化によって再構築するプロジェクトです。PayPayでは、ユーザーに価値を早く届けることを重視し、スピードを持ってサービスを立ち上げるために、まずはミニマムな運用体制でスタートを切ることがあります。その一方で、時に予想を遥かに上回る反響をいただき、オペレーションの即時改善が求められる場面もあります。この案件はまさにそのケースでした。
資金調達のサービスは、リリース以来急速に利用が拡大し、想像を超える成長で伸び続けている一方で、オペレーション業務はシステム対応が成長に追いつかず、マニュアル作業が多く残っていました。オペレーション業務が、いずれ事業成長のボトルネックとなることは明らかで、それは絶対に避けなければならない状況でした。私の判断軸の中心は「ユーザーファースト」です。裏側の仕組みが崩壊すれば、加盟店様への資金提供が遅れ、事業機会を奪ってしまう。だからこそ、ビジネスアーキテクトとして、事業計画を先回りした成長基盤へつくり替える必要があったのです。しかし、2025年6月にプロジェクトをキックオフした際、突きつけられた条件は過酷でした。事業規模が一気に跳ね上がると予測される時期に備え、4ヶ月後の10月には絶対にリリースするというデッドライン。理想的なシステム要件を定義して見積もりを取ったところ、開発には半年以上かかるという結果が出ました。
このとき私が最も警戒していたのは、「理想を追って、結果的に事業を止めてしまうこと」でした。4ヶ月で出すか、諦めるか…。ここで私は、プロジェクトリードとして戦略的な決断を下しました。「開発スコープの最適化」です。業務全体を分析することによって、ボトルネックになっていたプロセスを特定し、そのプロセスの自動化へ開発リソースを一点集中させることにしました。一方で、例えば運用担当者がデータを見る画面(UI)などの優先度が低い要件は、既存ツールで代替するなどしてスコープから外しました。
この判断はロジック上は最適でも、簡単に踏み切れるものではありませんでした。画面開発を行わない場合、業務側で簡易的な画面を構成する必要があり、その分の不安も伴います。運用チームからは懸念もありましたが、限られたリソースと期間の中で、最大の成果を出すためには、どこに注力すべきかを論理的に説明し、合意形成を図りました。妥協ではなく、最短で事業を守るシステムを稼働させるための「選択と集中」です。結果として、私たちは4ヶ月という短期間でリリースを実現することができました。

プロジェクトで実現したオペレーション業務の具体的な変化は?
本プロジェクトにより、オペレーション業務は劇的に変化しました。具体的には、対応優先度の高い案件が自動で抽出され、必要な情報が集約された状態で担当者の手元に届きます。これにより、1件あたりの対応にかかる時間が大幅に短縮し、チーム体制の最適化と、数千万円規模のコスト削減インパクトを実現しました。特に大きかったのは、事業の成長に比例して増えがちだったオペレーションコストを、構造的に抑制できるようになった点です。自動化とAI活用によって、利用が拡大してもコストが比例的に増えない状態をつくることができました。また、数字以上に大きいのが判断の再現性です。人が判断に迷う時間が減り、誰がやっても同じ品質でリスク管理ができる。構造が整うだけで、オペレーションの質とスピードが同時に向上する。それを数字として実証できたプロジェクトでした。
プロジェクトを通じ、成長を感じた部分を教えてください
短期間での開発において、最大のリスクは認識齟齬による手戻りです。私は非エンジニア出身ですが、これまでプロジェクト推進をした経験からシステム開発の成否は要件定義の正確さで決まると感じていました。私たちが書いた業務要求(BRD)と、開発側が書く仕様書(PRD)の間に、1ミリのズレもあってはなりません。
当時は開発チームとの定例ミーティングを週4回実施し、BRDとPRDを一行ずつ突き合わせ、この業務ロジックはシステムでどう表現されるのかを徹底的に翻訳し合いました。専門用語に戸惑うこともありましたが、不明点は即座に調べ、議事録として文字化し、曖昧さを排除していきました。この泥臭い対話の結果、開発フェーズでの大きな手戻りはゼロ。予定通りにリリースを迎えることができました。分からないから任せるのではなく、プロとして責任を持って仕様を定義する。この姿勢こそが、チーム全体をワンランク上の視座へと引き上げたと感じています。
PayPayで働く醍醐味は?
PayPayで働く醍醐味は、新しい技術を実利のために使い倒せる点です。システム化の後、一部のオペレーション手作業が残っていましたが、ここには生成AIを導入しました。AI判定と人判定のギャップを埋めながら業務を全て自動化する。ゼロにするゴールから逆算して、AIを活用する運用へ抜本的な見直しをする。このように、業務プロセスの出口から逆算することで、AI導入のハードルを下げつつ、さらなる業務のゼロ化の実現に取り組んでいます。
また、平時の効率化だけでなく、有事の対応力も私たちの誇りです。スピーディーな意思決定や判断が出来る体制のもと、例えば、過去に災害が発生し新たな業務対応が必要となった際には、検知からわずか数時間で対応フローを構築・実行できた経験があります。「事業を止めない。むしろ前倒しできる状態をつくる」。このスピード感と責任感こそが、PayPayの業務推進です。
チームの価値と働く環境
所属チームの雰囲気を教えてください
私のチームは、金融、業務、オペレーションなど多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されています。得意分野が違うからこそ、システム要件の議論でも「運用視点だとこうなる」「リスク視点だとこうなる」という多角的な意見が出ます。ハイブリッドワークスタイルでの働き方ですが、オンラインコミュニケーションツールを介しての対話は非常に活発です。分からないことはすぐに聞き、知恵を出し合う。一人ひとりが自律したプロフェッショナルでありながら、チームとしての連帯感も強い。非常に頼もしい環境です。

これから描きたい「次の当たり前」
今後の目標やビジョンを教えてください
事業の成長速度に負けない強固な成長基盤をつくり続けていきたいです。特にAI活用は、これからの業務推進において前提条件になります。ツールとして使うだけでなく、AIがいることを前提に業務フローそのものを再発明できるか。それが私たちの価値を決めると考えています。
AIの進化によって、業務推進の仕事の中身も確実に変わってきました。今後、「何をAIに任せ、何を人が握り続けるのか」を意識的に切り分けていく必要があります。再現性が高く、説明可能な業務はAIに委ねる。一方で、どの選択肢を取るのか、何に責任を持つのかといった判断は、人が担い続けなければならない。AIは答えを出すことは得意ですが、「何を問うべきか」を決めることはできません。現場で違和感を持ち、課題を定義し、次の一手を考える。その創造に向かう部分こそが、人の仕事だと思っています。
業務推進の仕事は、完成形をつくることではありません。変化し続ける前提で、何度でもつくり替えられる構造を残すこと。その積み重ねが、事業のスピードと信頼性を同時に支えています。PayPayには、まだ誰も手を付けていない白地がたくさんあります。前例がないからこそ、自分で考え、戦略を立て、周囲を巻き込んで実行できる。自分で決めた道を正解にしていける力が、ここでは何よりも求められます。
読者へのメッセージをお願いします!
大切なのは、「ユーザーのために、事業をどう変えていくか」という熱意と、プロフェッショナルとしての実行力です。金融知識等は、入社してからでも身につきます。コンビニのレジで「PayPay♪」という決済音が連続して聞こえてくる瞬間、私はいつも誇らしい気持ちになります。私たちが裏側で作った仕組みが、社会の当たり前として機能している証だからです。変化を恐れず、スピードを楽しみながら、次の時代のインフラを一緒につくっていける仲間を待っています。
